■結局今度の本『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』にここ数ヶ月間、ほぼかかりっきりだったわけですが、でも他の仕事もいくつかはやってたわけでして、またしてもそういう自分の仕事の宣伝をしないまま年を越してしまいました。
世に出たタイミング的に最新のものから遡って、ここしばらくの仕事の一部をメモ的に。
3日前に発売になった『ミュージック・マガジン』02月号のコラム〈ポイント・オヴ・ヴュー〉に1本、書いてます。〈脱原発の立場から、この前の総選挙の結果をどう受け止め、今後どのように行動するべきか?〉というテーマを編集部から投げられたのですが・・・
(前略)ぼくは話の前提となる選挙制度自体を信用していないから当然その結果もハナから重視しないことと、編集部の意向に従うまでもなく、お生憎さまだが〝推進派〟の読者には全く配慮しないことだけ先に述べて話を進めるが、つまりそんなわけで、選挙結果で反原発派が落胆する必要などないのだ。(後略)
てな2000字弱の原稿を書いてます。
その一号前、表紙にきゃりーぱみゅぱみゅとボブ・ディランが一緒(なのが傑作)の2013年01月号では、恒例の昨年のベスト・アルバムを選定してます。ぼくはおなじみ大石始さんと合議で〈レゲエ海外〉〈レゲエ国内〉のベスト・アルバム各5選。それからレゲエ以外から選んだ2012年の鈴木孝弥個人ベスト10選。
昨年末にリリースされた話題作、ジンタらムータ with リクルマイ「平和に生きる権利」にコメントを寄せました。
このリンク先にそのコメント(肩書き付けるの忘れてオレだけ偉そう・笑)も載ってますが、そんなことより、この曲の詳細なインフォもあるし、プロモ映像も観られます。素晴らしい歌と演奏なのでコメントにもあんな風に書きました。でも本当に、聴くたびにギュッと胸が締めつけられる。そこに痛みも伴うんだけど、その痛みを誤魔化さず、逃げない、癒し(←という言葉は、オレは滅多に使わない)の鼓舞に満ちている。昨年末以降、我々にはこの曲がある。みんな、一緒に聴こう。カバンの中に入れて、この曲を持ち歩こう。
『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』の発売が結局年をまたいだことと、オレが12月のローリング・ストーンズのデビュー50周年記念公演のチケットを(ニュー・ジャージー公演もブルックリン公演も)買えなかったことは、全く無関係ではない。どこか1枚でも買えたらニュー・ヨークに飛ぶつもりだったので、本のデータは12月上旬までに印刷屋に入れられる状態に仕上げようと思っていたのだが、11月のチケット発売日にUS《チケットマスター》にアタックしても、ネット回線大混雑。結局アクセスできて買える権利を得られたのは800ドル(!)の特等席だけだったのであきらめ、オレを追い立てるものがなくなったことで本のカヴァーまわりや紙選び等々、じっくり時間をかけた結果、印刷屋さんに入れるのが年末になったのだった。
そんなN.Y.のチケットも狙ってみたりする程度のローリング・ストーンズ好きではあるけれど、仕事でストーンズの原稿を書く機会を与えてもらえるほどの立場では全然ないので、11月に発売になった『レコード・コレクターズ』1月増刊号『ローリング・ストーンズ名曲ベスト100』では、いち読者としてアンケートに応募してみた。あなたのベスト10曲リスト&1位の曲についてのコメントを書いて送って、というヤツ。そしたら〈東京都・鈴木孝弥〉さんとして自分の1位の曲のコメントを採用してもらえた。やった!(で、オレのストーンズのベスト・ソングは、ずっと昔から「Monkey Man」)。――つーか、こんなの“仕事”じゃないわけだけど、東京都港区の区議に鈴木孝弥さんがいるんで(そっちは、すずき・たかや さんだけどね)、自民党員がこんなグロでドラッギーなコメントを書いたのか? って噂になると彼に間違いなく迷惑かかるんで、ここに書いときました。
こっちは『ミュージック・マガジン』&『レコード・コレクターズ』プリゼントの増刊『定盤1000』。『ミュージック・マガジン』600号記念企画として、同誌の11月増刊号として発売になったものですが、中のレゲエ枠を担当しました。ぼくの考える究極の定盤33枚を選び(選ぶというのは、すなわち落とす作業なので、そこはツラかった)レヴューしてます。しかし、これがオール・ジャンルから選び抜いた定盤の1000枚だ!という堂々たるコンセプトの迫力は、ペイジをめくってるだけでガツンとくる。聴いたことのない作品が多ければ多い人ほど、この本は楽しい。
10月下旬にリリースになった小泉今日子デビュー30周年記念盤『Koizumi Chansonnier(コイズミ・シャンソニエ)』の中の1曲、菊地成孔プロデュース曲「大人の唄」で、歌詞のフランス語を作りました。菊地さんの書いた歌詞を部分的に仏訳したのですが、菊地さんの日本語の深み・言葉の裏側の影の部分がどうやっても(フランス人に相談しても)仏語に置き換えられない箇所は、菊地さんに了承を得て表現を創りました。そんな風にして書いたフランス語フレイズの一部が飾り文字としてジャケットの中央(タイトル下)に使われてます。ファン冥利に尽きるとはこのこと。肝心の楽曲の方も実にかわいらしい仕上がりで、その中に菊地さんらしい“スパイシー”なセンスが随所に利いています。形に残ったものの中で、ああフランス語を学んでよかったな、と、これまで一番実感した仕事は、マヌ・チャオに直接インタヴューしたことと、この小泉さんの録音に関われて、自分の仕事がジャケの真ん中に使われたことだろう……。
とか、うっとりしてる場合では、実はないのであって、とにかくみなさんに知っていただきたい『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』もフランスの本です。この本を紹介できることも強烈に意義深いことだと思っていますし、ホンヤクティヴィストとして今、やっとくべき仕事をちゃんとしたつもりです。おかげさまで、先週よりリアル書店で先行発売中。「目立つけど、何の本か分からない」というご意見をたまわった書店さんが数軒ある以外、おおむね、よい反応をいただいてます(って書くんだよね? こういうとき・笑)。
で、ネット書店でも販売開始になって落ち着いた頃に(来週とかに)この本のことを改めてきちんとお知らせします。ああそうだ、この本の関連で先日、東京下北沢は対抗文化専門古書カフェ気流舎のZineにも6000字ほどの原稿を書いたのだった。これも、オレ以外の寄稿者のテクストを読むのが楽しみで、できあがりを心待ちにしています。