6.05.2013

眠られぬ夜に

■ヒルティはもう読みたくならないし、遠藤周作の『眠れぬ夜に読む本』も中身を覚えちゃってるし、……代わりに團伊玖磨の『パイプのけむり』シリーズを乱読していたらすっかり眠れなくなった。

随分ブログを更新しなかったが、仕事で毎日かなりの(量もしくは時間)文章を読み、訳したり書いたりし続けた上に気分的なノリの欠如が加わり、仕事以外の文章を書きたいと思う気持ちにならなかったので、それに任せて書かなかっただけで、多少体調がすぐれない以外、特に変わりはないです。

ならばツイートするかというと、同じ理由で140字の文章を作るのも億劫、という日々(“文章を作る”という意識からして twitter に不向きな証拠か)ですが…

…今《ツイログ》で調べてみたら、オレは、
[twitter歴772日/ツイート数1,110(1.4件/日)]
だそう。
もう2年もやってるし、これって自分では相当なつぶやき量な気がするけど、リツイートも含めての数だからなあ。twitter って結局そんなに熱心になれないけど、どことなく人生修業みたいな気分がしている。


毎日結構な量/時間、文章を読んでる、という中には新聞も入ってて……、で、思うところあって、この数ヶ月、新聞を二紙、読んでいる。40代半ばにして、毎朝新聞が二紙配達されるという経験は初。いつまでこの状態が続くか分からないけれど、相当に気に入っていて、ああ、新聞は一紙じゃだめだな、という思いが日に日に深まっている。

“だめ”っていうのも語弊があるかもしれない。より正確に言えば――毎朝起きると新聞が届いてる(今日は眠れないことに悶々としているうちに二紙とも来ちゃったが)ことがどれほど幸せなことかは前々から分かっていたが、それが二紙になると、その幸せ感がほぼ純粋に2倍になることを知った、というニュアンスだ。毎日それなりの時間を割いて、新聞を最低でもふたつくらい読むことを許す生き方が望ましいなあ、とも思う。

読んでるのは『東京』と『朝日』で、膝を打つ記事が多いのは『東京』、一方、切り抜きたい記事が多いのは『朝日』。こうなると、明らかに不愉快な新聞もひとつくらい取ってみたくなる(オレは一日おきに爪を切るし、散髪もスキカル使って自分でやるので)。
毎月、一番嫌いな日は新聞休刊日だ。二紙取ると痛感するんだけど、新聞休刊日まで横並びにしなくていいだろうよ、日本人。

今朝の一面は、そりゃ本田だろうね。個人的には、(何度も書いててしつこいけど)日本代表で一番好きなの圧倒的に遠藤選手だけどね。

ワールド・カップをその最たるものとして、国際試合というのはイコール、“ナショナル・チームの概念”なので、日本チームに日の丸と君が代はついてまわる。オレは、そのどちらも好きじゃないが、好きな人を否定する権利もないし、顔に描く人を頭おかしいとも思わない。オレもデザインは嫌いではないが、日の丸を目にするということは、それが美しい円形であればあるだけ、そこに血塗られた赤の生臭さを嗅ぎ取り続ける努力を強いられることだという認識を持っている。オレには今もって理解できないが、もし本当に、国旗と誇りというものが結びつくのなら、誇りとはその努力のことだろうと思う。その誇りとは、日の丸を嫌う人を否定することではなく、そうした人々の気持ちを忖度することを必要要件とするものだと思う。

夜のTVニュースで、例の渋谷駅前のバカ騒ぎvsオマワリの様子見てふと気づいたことだけど、君が代って、次代を担う若者たちがこんな風にナショナル・チームを讃える“美しい”場面で歌えない国歌なんだよね。大歓びでスクランブル交差点をスキップしながら君が代を歌ってる若者、見たことないでしょ(笑)。もしオレが君が代で好もしいところをがんばって探すとしたら、国威の発揚とか、高揚感とか、そういうアッパーさと縁遠いその曲調だね。ま、闘いの前に歌うのにも向かないわけだけど。

さて、遺伝子組み換え作物問題、モンサント問題がいよいよたいへんなことになってきた。
オレゴン州の例の問題に関して:

米農務省は29日、オレゴン州の農家の畑で、政府が承認していない遺伝子組み換え小麦が見つかったと発表した。同省は「事態を深刻に受け止めている」として、本格調査に乗り出した。事態を受けて農林水産省は30日、同州で生産された小麦を、政府の買い入れ入札から当面外すことを決めた。
(中略)
日本は主に家畜のえさや食用油の原料として、特定の除草剤に強い遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシを輸入している。今回の遺伝子組み換え小麦はこれらと同じ種類のもので、食べても安全だが、小麦は日本が輸入を認めている8作物には入っていない。(後略) 
(毎日jp)※太字はオレ
この記事自体が相当に怖い。
つまり〈アメリカ政府が承認〉したモンサントの食物“兵器”は流通させて問題ない、という話なのである。そして毎日新聞も〈食べても安全〉だと断言している
こんな断言、していいの? スキャンダルだろ!? これ。

6月8日に公開される
ジャン=ポール・ジョー監督の『世界が食べられなくなる日』を観た。

映画『世界が食べられなくなる日』
日本政府の連中や、霞が関の遺伝子組み換え作物、および原発関連の当事者は、この映画を観ないだろう。もし観たとしたら、観たことを絶対口外しないだろう。すなわち、この映画は、我々平民が自分の命を守るために、絶対に見るべき作品なのだ。

参議院選挙が大切だと思っている人は、必ず選挙前に観た方がいい。なるべく健康で、死ぬまでに1大会でも多くワールド・カップを観たいと思うなら、どこに投票してはダメか、ハチ公前でスキップしてる連中こそ知っておくべきだろう。
オレはこの映画を観てる最中に2回泣いた。

さて、『あまちゃん』見っか。

4.20.2013

ミスティー・イン・ルーツが観たいぜ!

■ルーツ・レゲエのバンドの中で一番好きなバンドが《Misty in Roots》だ。1975年にロンドンで結成された、UKのホームグロウン・レゲエ・バンド。

1979年のデビュー・アルバム『Live at the Counter Eurovision』(ベルギー/ブリュッセルのライヴ)は、今もってレゲエのライヴ盤の最高峰に君臨し続けている。



70年代イギリスでの、極右政党の台頭、移民排斥運動の盛り上がりに対抗するべく、黒人のレゲエ・ミュージシャンと白人パンクスが共闘した《ロック・アゲインスト・レイシズム》ムーヴメント(つまりエリック・クラプトンのレイシスト発言がみんなに叩かれた例のあれ)の代表的なグループでもある。

あと2年で結成40周年という超ヴェテラン・バンドだが、これまでにフル・アルバムは6枚しか出しておらず、うち2枚がライヴ盤(2枚とも内容最高で、入手は相当に困難)、それどころか、1989年を最後に、この25年近く1枚も録音していない。

90年代以降はライヴも滅多にやらなくなってしまい、この10年ほどは、気が向いたらイギリス国内で年に数回のギグをやったり、ヨーロッパのフェスにチョロっと出る程度。しかし、その合計回数が1ケタ、という年もザラだ。

とにかくレコーディングはしない、ライヴもやらない、オリジナル・アルバムは全部廃盤のまま再発もしない、という、つまりほとんど何もしないこと、その商売気のなさ、やる気のなさが、渋く黒光りする《MIsty in Roots》伝説の肥やしとなり、そのバンド名を輝かせ続けてきたという、つまり端的に言って、恐ろしくカッコいいバンドである。こんなバンドはなかなかない。

ぼくは2002年に彼らが15年振り(くらいだったはず)にパリ公演をやるというのを聞き、矢も盾もたまらずパリへ飛んだ。そのときもミスティーはせっかくフランスまで来たのに、パリ公演たった1回しか演らなかった。由緒ある最高のホール《エリゼ・モンマルトル》(キャパ1200)を満員にし、それでおしまい。

演奏は素晴らしかった(微妙に与太っててザラッと粗めだった)し、ちゃんと昔と同じ音を出してることを確認できただけで鳥肌が立った。チケットもこの21世紀に2500円程度、前座もなし。こんにちは、も、ひさしぶり、も、さようなら、も、何もなかったし、淡々と1時間半くらい演り続けて帰っていった。その最中、メンバーはニコリともしなかった。レゲエマンは往々にしてラヴ&ピースの表現法を間違えてすぐお客さんに媚びるものだが、ミスティー・イン・ルーツは全く違った。(かっけー!)

で、久しぶりのパリ公演のお誘いのメイルがきた! 5月3日だという・・・


ああ、時間はあるけど・・・

今回の会場《ニュー・モーニング》は、81年にアート・ブレイキーやチェット・ベイカーがこけらを落として以来あらゆるジャズ・グレイツが出演してきた、パリ10区〈小さな馬小屋通り〉にあるジャズ・クラブだ。最高だね。ここはキャパが500しかない。

世界中のジャズ・マニアあこがれの名クラブだが、とはいえ店名はボブ・ディランの『新しい夜明け』から取ってるし、レゲエやブルーズ、ソウルなんかのブッキングも多い。

ぼくもここでギル・スコット=ヘロンとかテリー・キャリアーとか観たし(二人とも、もうこの世にいない…)、レゲエならミスティック・リヴェレイション・オヴ・ラスタファーライとか、アイジャーマン&ホースマウスとか、パブロ・モーゼズとか、リコ・ロドリゲス&ジャズ・ジャマイカとかウィンストン・ジャレットとか、とにかくレアなものをいろいろ観た・・・

こんな絶好の機会にMIRを観に行けないほど経済的に余裕が無いんだからヤんなるよ。調べたら、チケット代は10年前よりは流石に高くなってる。26ユーロ。3千円超えだ(笑)。

これは2004年、ミュンヘン近郊の湖ヒームゼーのレゲエ・フェスに出演したときの映像だけど(ドイツ人は湖さえあると、夏休みにその脇でレゲエ・フェスを開きたくなるクセがあるので、こういうフェスが各地にある)、オレが観たのはこの2年前だから、バンドの雰囲気はちょうどこんな感じだった。

4.13.2013

Ding Dong ! The witch is dead !


■ロンドン中心地に描きたてホヤホヤの秀逸なグラフィティだけど、地獄でも焼死刑って……死屍に鞭打つよりもずっと凄い(笑)。

つって、笑っちゃいけないよね。こういう“魔女”に将来の展望を与えてもらった、まだお若くていらっしゃる偉いこんなセンセーもいるわけだからさ↓。
(24時間とな !?)


サッチャリズム、レーガノミクスの功罪、とかよく言うけどさ、“1%”の連中以外の誰にとって、どんな“功”があったのさ? その検証もなく、「正しいことは正しい(自分のフトコロにとって)」の論理で、声のデカい連中が力技で世の中のレールを敷き、延ばし続ける、ってのは、経済問題も原発問題もやり口がまるで一緒だよね(つーか、両者は“同じ”問題なわけだけど)。芸がなさすぎるんだよな。

上のグラフの素晴らしい点は、地獄の沙汰はカネじゃどうにもならない、ってことを教えてくれてるところだね(笑)。中曽根以下、魔界系のセンセー方たちと財界のお偉いさんたちは、現金いくら持って行ってもダメみたいよ。ごくろうさん。
(その分、孫の英才教育代に回って、魔界の再生産になんのかな、非課税で・笑)

3.27.2013

ローリング・ストーンズの20年前に「ハーレム・シャッフル」をカヴァーした男

■03月25日、好事家としては、ちょっと楽しみにしていたソウル・ヴォーカル・トリオがデビューした。その名は《Vigon Bamy Jay(ヴィゴン・バミー・ジェイ)》。アルバム・タイトルが「Les Soul Men」というベタさで、それにこの宣材写真じゃ、老いらくによる『Les Soul Men』という名の青春再生映画のポスターに見えちゃうのだが、これ、3人とも歴としたフランスのソウル・シンガー。


その3人が組んで制作したアルバムが、またソウル〜R&B名曲集という、これまたぞっとしない“売らんかな”企画。レコード会社が昔のグループを再結成させたり、ベスト盤、企画盤を乱発してなんとか食いつながなくちゃならない苦境は世界共通だ。

でも逆に考えると、この3人は、そういう企画を立てれば売れるだけの人気者、ってことなんだが、この中にぼくが前々からちょっとファンだった男がいて、こんな機会ではないと彼のことを紹介することもないだろうから、同好事家のために手短かに。

ぼくが好きなのは一番左の黒眼鏡の男ヴィゴン。彼は1945年にモロッコはラバで生まれた。現在67歳。モロッコ生まれのソウル・シンガーってわけだ。

で、彼の凄いところは15歳くらいでその歌唱力をパリで認められ、《バークレー》からレコードを出し、その後、ボ・ディドリーやオーティス・レディング、スティーヴィー・ワンダーやローリング・ストーンズのパリ公演の前座を任され、遂にはモロッコ生まれの18歳仏人歌手として、当時の《アトランティック》と契約するにいたったことだ。

その60年代の彼の人気を決定づけたといわれるヒットが、ボブ&アールの「Harlem Shuffle」のカヴァー。


これが1967年のパリ。当たり前だけど、“イェ・イェ”ばっかりじゃなかったのだ(実はR&B指向のフランスの歌手はたくさんいた)。

ローリング・ストーンズがこの曲のカヴァーをシングルでリリースしたのが86年だから、そのおよそ20年前のことになる。で、フランスでは、ストーンズの(ボビー・ウォマックがコーラスで参加してるという)あの名カヴァーを聴いたときに、みんな「あー、ヴィゴンのアレね」と言ったというくらい“ヴィゴンの曲”なのだ。それに60年代に、パリ公演の前座でヴィゴンが歌う「ハーレム・シャッフル」を、舞台袖でストーンズの面々が聴いていたかもしれないしね。

そして、これは同じくヴィゴンがそこから約45年後、TV局〈カナル・プリュス〉の特番で歌った現在の(!)「ハーレム・シャッフル」だ。



ご覧のように今の方がキョーレツにカッコいい、ってわけで、1949年生まれの名歌手エリック・バミー、あと(二人が苦しくなった高音部を担当するために・笑)パリ郊外の実力派若手ヴォーカル・グループ〈Poetic Lover〉のジェイを加えて、今回の《ヴィゴン・バミー・ジェイ》が誕生した。


リード曲は、これまたベタなモーリス・アルバート「Feelings」のカヴァーなんだけど、ダメだ、ベタすぎて単純なオレはまんまと持って行かれる。腹を見せて寝ころんでしまう。(少なくともこれ↓は大画面でどうぞ! 音も素晴らしいし、映像も美しい。ニュー・ヨーク、ロンドン、パリと、3大都市で色男が苦悩しまくる壮絶な失恋歌が展開されている)


歌い出しがグアドループ生まれのエリック・バミー、次が今風のパリの若者ジェイがネオ・ソウルの教科書通りに盛り上げたあとに登場する、イカしたオールドタイマー:ヴィゴンのフランス語パートが最高じゃないですか! カフェをかき混ぜながらフランス語でこのシャウトする絵が許される、つう。

おととい発売となったアルバムは、まだ日本ではフィジカルはおろか、ディジタル・リリースの試聴すらできないので、フランスのiTunesミュージック・ストアに行くしかないけど、まあ、ざっと試した感じ、3人のなかなかセクシーないい歌が聴ける。でも選曲はほんとベタ。その苦々しさも楽しさにできる、その意味でも気骨ある好事家向け。

3.08.2013

《Actipedia(アクティペディア)》始動!

《Actipedia(アクティペディア)》、すなわち、アクティヴィズム(直接行動主義)用の百科事典(encyclopedia)。

〈wiki〉システムを使用して、インターネット上のウェブペイジに誰でも書き込め、訂正できる《Wikipedia》が作られたように、その項目をアクティヴィズムに特化した《アクティヴィズム百科事典》だ。


(収録される事項の、カテゴリー分類⇩)



世界的に有名なイタズラ・アクティヴィストの王様で、日本でも特に松嶋×町山 未公開映画を観るTVのファンには“お笑いテロリスト”としておなじみ、またコンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアルでも彼らの作ったニセ新聞の話などを紹介している〈 The Yes Men 〉が運営するアクティヴィズムの戦略研究所《 The Yes Lab 》と、ニュー・ヨークの《センター・フォー・アーティスティック・アクティヴィズム(Center for Artistic Activism 》が共同で準備してきたものだ。

この専門事典が一般公開されるやいなや、世界中から、これまでに実施されたアクション、あるいは開始され継続しているアクションに関して、既にどんどん書き込み(=事典に項目が追加)されている。

これは実に素晴らしいアイディアであり、ランダムに見ていくだけで実に楽しく、勇気が出る。みんな、こんな専門事典を待っていたのだ! 世界中で人間はいろいろなことに苦しめられており、それに抵抗するために、いろいろな策を講じて実践している。それまとめた事典を“楽しい”と形容するのは多少問題があるが、でも、この事典が示す世の中は、これまでより間違いなく楽しい。

もちろん中には“支配者”の理不尽に怒りを覚えるものもあるし、見た瞬間に胸が締めつけられ、涙が出てくる項目もある。
たとえば、これは1991年にエイズで大切なパートナーを失ったアーティストが、ニュー・ヨーク市内の20箇所超のビルボード(大型野外広告ボード)に、こんなベッドの写真を掲げて市民にメッセージを送った、というアクションを記した項目だ。
厚生労働省のHIVへの注意喚起対策も必要には違いないが、こうした写真(アーティヴィズムの手法)に、学者と役人の作った文言よりも遙かに直裁的で雄弁なパワーが(それが全能ではないにせよ、意識喚起のためには実に有効なパワーが)あることを否定する人は少ないだろう。

一方で、この“百科事典”の中には本当に笑っちゃうようなアイディアもあるし、こんなんで効果あるのかね、というようなものもある。どこまで本気か、ふざけているのか分からなくても、そういうおかしな、ときに荒唐無稽なアクションが笑い話として広まることで、みんながその背景に横たわっている〈抑圧/被抑圧〉の構造を認識することに繋がる効果を狙っていたりするのだ。

この最新のウェブ専門事典《Actipedia(アクティペディア)》のモットーは、彼らが今回発表した声明文の中から抜き出すなら:

《To change the world we've got to learn from each other.(世界を変えるためには、お互いに学ばなくちゃならない)》

ということになるだろう。

ぼくが先日翻訳出版した『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』は、この《Actipedia(アクティペディア)》と全く同じフィロソフィーを持っている本なので、当然トピックの重複も出てくる。

その『コンバ』の刊行と《Actipedia(アクティペディア)》のスタート時期が同時になったのも偶然ではない。どう見たって、これからの世の中、そっちの考え/方法論/生き方に重きを置くようにならないといけないのだ。

そうでなかったら、いつまでたっても我々は、やられっぱなしのままである。

〈権力にオマエの人生を献上すること、それが幸せというものだ・・・〉という催眠術にかかったまま、そのうち、彼らの望み通り、蒙昧の闇に永眠するのだ。

★0310 原発ゼロ☆大行動

■あさって、今度の日曜、0310。


もうあれから2年。
ぼくは昨日、東北新幹線に乗っていた。福島と郡山の間で、車窓から目に映るあらゆるものに目を凝らすも、すべてが、2年前に何も起きなかったかのように存在していた。

「見えない・聞こえないから〈済み〉」になるのならば、確かにその最良の方法は、見ない・聞かないことだ。そして、何も目に見えない中、新幹線は高線量の中を、いつも通り走っていた。

見えないものは怖くない、と考える/自分に言い聞かせるのも、処世の術のひとつだ。確かにそう考えないと東京のスーパーマーケットで買い物ができない(そこで買い物をしないで生きる術がないのかどうかは、また別の話だが)。

その一方、敵が目に見えるならば、そいつに抗議ができる。
騙されねえぞ! と叫ぶことができる。

(クリックで拡大。元ペイジ、詳細は⇩)

当日プログラム出来ました!


PDFファイルでダウンロードできます。(20130310PGM.pdf (1.3MB) 

2.13.2013

『コンバ』に出てくるワード集

『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』発売のお知らせ、全目次はこちら

今日は、本書(解説、あとがき含む)に出てくるワード・人名から主要なものをご紹介します。

▶▶▶オキュパイ We are the 99% アノニマス プッシー・ライオット(フェミニスト・パンク・ロック) ステファン・エセル『怒れ! 憤れ!』 ハクティヴィズム(ハッキング) ガイ・フォークス アンチAD クラウン・アーミー Think globally, Act Locally アクティヴィズム(直接行動主義) アーティヴィズム グリーン・ゲリラ カウンター・カルチャー ウィリアム・S・バロウズ バトル・イン・シアトル(バトル・オヴ・シアトル 1999) アルテルモンディアリスム(オルターグローバリゼイション) 養蜂革命 国境なき大麻 ピエール・ベルジェ 市民的不服従(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー) パレオ・ダイエット 温室効果ガス 破格語法 アルテュール・ランボー COP15(コペンハーゲン・サミット) ネオフェミニスト 核兵器廃絶アクション(ボムスポッティング) バラク・オバマ ジョセフ・ロートブラット バートランド・ラッセル 行動か、さもなくば死か レミ・ガイヤール バイコット(Buycotte) コンシュマクター フラッシュ・モブ ボイコットBP グリーンピース(Greenpeace) テイト美術館を解放せよ(Liberate Tate) (エコロギーク)エレクトロニクス・ガイド 任天堂 東芝 ソニー エコ・バッテリー ソウシャル・コリオグラフィー レディー・ガガ・デモ LGBTプライド運動 リップダブ ネット市民権 AVAAZ.org カーボン・オフセット ANA(全日空) バイオ燃料 レジスタンス シャルル・ドゥ・ゴール主義 連帯キセル iPhoneアプリ タックス・ヘイヴン 新自由主義 バンクシークレッツ(www.banksecrets.eu/) 城南信用金庫 Move Your Money 舞踏テロ サンドラ・アブアヴ ヴァンサン・セスペデス IKEA 野宿者 エイズ ジェネリック医薬品 海賊党 ジミー・チュウ スシ・セレクター プレゼント免除証明書 空気浄化植物 アドバスターズ(広告破壊者集団) 無買デー(Buy Nothing Day) シテュアシオニスト ギー・ドゥボール ポップ・ダウン・プロジェクト トランスジェンダー的実存主義 アクト・アップ! 死の見本市(Salon de la mort) リソメイション イスラム教ファトワー 授乳アクション カーボン・フットプリント 反GMO(遺伝子組み換え生物) モンサント オレンジの半分 ニセ新聞 イエス・メン(The Yes Men) 強制国外退去 国境なき教育ネットワーク Porn for the Blind 昆虫食 キス=イン M.I.E.L.(性的衝動に関するエコロジーのための国際運動) ヴィルヘルム・ライヒ ベス・ディットー(ゴシップ) グリーン・カード 連帯貯蓄 ストップ・ショッピング教会 DIY ハッカースペイス バイク・ブロック ブラック・ブロック テリー・ギリアム(モンティー・パイソン) シュピール・グート グラスフェミー ダンプスター・ディップ 心理地理学 ドク・ジネコ グローバル・オーガズム・フォー・ピース  World Water Day グルーチョ・マルクス 緑の党 ダニエル・コーン=ベンディット ジョゼ・ボヴェ ドライ・トイレ グリーン・ウェディング・プランナー パクス(PACS フランス婚) ビオナニスト エコセックストイ SMSメッセージ ブーブクウェイク(おっぱい地震) バンクシー スペイス・インヴェイダー ゼウス リヴァース・グラフィティー(グリーン・グラフィティー) ポール “ムース” カーティス ケルヒャー グリーン・ヴァンダリズム イケア・ハッカーズ ルパンタンス 鈴木杏里 アルジェリア戦争 ルワンダ・ジェノサイド フランサフリック フェア・トレイド セクシャル療法 Park (ing) Day 性のアシスタント ロックコーア・プロジェクト ダヴィッド・ゲッタ ヤニック・ノア 電動アシスト自転車 自転車共用サーヴィス リサイクリング リサイクル・バンク 分別ポリス オリヴィエ・ブザンスノ(反資本主義新党) カルフール ユロ(尿)・エコロ フリーガン(Freegan) 週一菜食主義 ミートアウト・デイ ポール・マッカートニー 国際連帯休暇 国境なき発展 アレヴァ(アレバ) 球根テロ ゲリラ・ガーデニング エコロ=ブラックアウト ネオン団 トマ・サンコマ ルベン・ウム・ニョベ ガンベッタ ルイーズ・ミシェル 自転車裸族(サイクロヌーディスタ) ワールド・ネイキッド・バイク・ライド 国民アイデンティティー ブラック・ブラン・ブール 富士山 スティーヴン・チュー マイクロ=アクティヴィズム プラシーボ エドワード・アビー 爆破/モンキーレンチギャング サボタージュ エコ=アクティヴィズム 監禁用特製サヴァイヴァル・キット リーマン・ショック アラン・マンク マイクロ=シエスタ スロウ・カルチャー スロウ・ブック うんち紙(poopaper) 下水熱 親切の日 セロトニン アメリ オーディオ=エコロジスト ソイレント・グリーン エコロ=ジック(エコ音楽)・ムーヴメント レディオヘッド エスカ・ヨーン(アスガー・ヨルン) グラスゴウ・アナキスト・サマー・スクール スリー・サイデッド・フットボール ジネディーヌ・ジダヌ ロカヴォア フード・マイルズ(フード・マイレージ) ゼロ・eメイル・フライデイ アンプラギング・デイ 持続可能な開発(SD サステイナブル・ディヴェロップメント) ヴェオサーチ CO2スタッツ グリーンバード ナイキジャパン 宮下公園 スウェットショップ ナイキ・ブランケット・ペティション セキュリティー・チェック・ポルノ ネイキッド・エアー END:CIV etc.
  

2.09.2013

三軒茶屋中央劇場 閉館に向けて



■少し前にtwitterで知り、劇場入口の貼り紙を見て、大ショックを受けました。三茶の中劇:《三軒茶屋中央劇場》が02/14をもって閉館するというのです。

ここは三軒茶屋のシンボルですし、この映画館と劇場があってこそ、この街は独自の文化的な魅力を保持しています。

資本主義のシステムにすべてが組み込まれ、流されていくことは、人間の営みとしての知恵を欠き、数値に換算できない豊かさを無為に手放してしまう、ひとつの明確な敗北であると思います。

確かに“きれいごと”で固定資産税は払えないわけですが、スクラップ&ビルド思想に(ごく一部の人々を除いて)もはや誰も明るく豊かな未来など見て取らないのですから、これからは、そういう“きれいごと”にこそ、価値を見出し、市民が力を合わせて、こだわっていくべきだと考えます。

それは言わば人間らしさを賭したシステムとの闘いなわけですが、そもそも、その大切さを教えてくれたのが、この劇場でかかっていた映画なのです。

上掲のウェブサイトで、「三軒茶屋のミニシアターの灯をともし続けたい!」という思いに賛同する人に対して署名を募っています。

映画業界のディジタル化の波に飲み込まれ、高額なディジタル上映機材が導入できない地方の映画館やミニシアターが、今、次々にやむなく閉館に追い込まれているわけですから、これは三軒茶屋だけの問題ではなく、日本中の文化の危機という社会問題なのです(この問題に関して《ワタシネマ》さんのこのブログが詳しい。http://www.watacinema.com/?p=3635 )。

世田谷区や東京都にお住まいの方でなくても、この問題を深刻にとらえていらっしゃる方は、是非、署名してください。

2.05.2013

『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』発売のお知らせ(正式告知)

■『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』(通称『コンバ』)、主要書店やネット書店におおむね行き渡りました(と、思います)。
(もちろん、注文して下さっていない書店さんには入荷しませんが……“わけ分かんない本だから様子見”、ってことでオーダーを保留にしているお店も結構あるみたいです・笑)


★『コンバ』を現時点で取り扱って下さっている書店等一覧。
(随時更新中。お近くの書店に現在取り扱いがない場合でも、ご注文いただければほどなく届きます) 


確かに、だれの目にもひと目で何の本か分かる本ではありません。現物を見た書店さんがどの〈ジャンル〉の本として扱うかも、そのお店によって違っているようです。
たとえばネット上で分かるネット書店の扱いを見ても・・・

《丸善&ジュンク堂書店》では〈政治評論

《紀伊国屋書店BookWeb》はジャンル名としては明記なし(NDC分類で〈社会思想〉)

《honto ネットストア》では〈社会・時事・政治・行政

《TSUTAYAオンラインショッピング》では〈エッセイ・随筆

《ブックサービス》では〈教育・社会

《セブンネット通販》では〈サブカルチャー

《Honya Club》では〈ノンフィクション・エッセイ・コラム

《楽天ブックス》では〈社会科学全般

《Amazon.co.jp》では〈外国のエッセー・随筆

《e-hon》では〈サブカルチャー

《エルパカBOOKS》では〈社会・政治

《ヨドバシ.com》では〈エッセイ・コラム(海外)

といった具合です。ですからリアル書店でも、お店によって〈棚〉は上記の範囲内でまちまちかもしれません。


著者はこの人:
彼女は81.3 J-WAVE 《Sounds & Cities》でも、パリ代表としておなじみでした。

彼女マティルド・セレルは、

パリのFMステイション Radio Nova :

の、平日午前中の担当のジャーナリスト/パーソナリティーで、毎朝10時ちょうどに放送していた2〜3分の人気コーナーが《Combat/コンバ》。インターネットや最新テクノロジーを用いた、新しい21世紀型の社会運動や個人的なアクションのトレンドを世界中から集めて放送するもので、その放送の抜粋が本書・・・要するに、「この世の中、ムカつく」から「何とかしたい/何かやりたい」けど、どっかの党の党員になるとか、デモに行くとか、組合運動をするとか、政治的な集会に参加する、とかいった従来型の社会運動には興味が湧かないよ・・・っていう世界中の(主に若い)人たちが、実際に実践しているアクションを紹介するものです。

ひとりで、自宅で、ネット上のワン・クリックで、iPhoneアプリを使って、身近な地域で、あるいは仲間同志で、市民グループ(アソシエイション)と手を組んで、など、いろいろな生活圏内の範囲で実践可能な、よりよい世の中のためのアクションと新しいライフスタイルを提案している、88篇のサジェスチョン集。

この原書を買って読んだらあまりに面白かったので、自分で訳しました。そして人名とか組織名、それぞれのトピックに関係した各国の社会的背景などについては、可能な限り(日本の状況と比べてかなり特異な話題に関しては、ことさら掘り下げた)解説をつけました(でも、日本の話題もいくつか出てきますよ)。

本文目次は以下の通り。
日本の新聞やTVでは報じられない内容が大半ですので、現在の世の中を知るためのトリヴィア的に読んでも面白いと思います。

ミツバチを養子にしよう
大麻の物資援助システムに協力しよう
パレオ式にたらふく食べよう
ヴォキャブラリーを“破格語法”化しよう
フランスにひげを生やそう
核兵器廃絶アクション(ボムスポッティング)をしよう
エスカレイターを嫌おう
バイコットしよう
《BP》を批判したおそう
バッテリーを交換しよう
声明や要求事項を振り付けにしよう
大義のためにクリックしよう
あなたのVOL(ヴォル)の埋め合わせをしよう
巡礼・○○詣でに反対しよう
連帯キセルをしよう
銀行をビシビシ締め上げよう
カミカゼ・ダンサーになろう
人道的な海賊行為を擁護しよう
“分別あるスシ”で昼食をとろう
あなたのプレゼントを非物質化しよう
オフィスの汚染を除去しよう
広告の公共空間への侵略に抗おう
トランスジェンダー的実存主義者になろう
この世からきれいに消えよう
お乳をあげよう
グリーンなナンパをしよう
ニセ新聞を発行しよう
強制国外退去を阻止しよう
目の不自由な人たちのためにXを録音しよう
食虫性になろう
キス=インの練習をしよう
有毛の抵抗に突入しよう
エコ(年)賀状を送ろう
連帯貯蓄をしよう
あなたの消費主義を悪魔払いしよう
あなた自身でやろう
クリスマスに、無防備な子供を守ろう
グラスフェミーしよう
雇用センターを人間的な機関にしよう
心理地理学(サイコジオグラフィー)の基礎を学ぼう
直属の上司をののしろう
グローバルにイこう!
何人かで洗おう
グリーンな結婚をしよう
ビオナニストなマスターベイションをしよう
フリーなセディーユのために闘おう
あなたの乳房を見せよう
新種のグラフィティを“描こう”
イケア(IKEA)をヤッちゃおう
罪を悔いるために、あなたの体を差し出そう
エコな酔っぱらい方を選ぼう
セクシャル療法を最適化しよう
PARK(ing) Dayをオーガナイズしよう
“性の助手(セクシュアル・アシスタント)”になろう
コンサートのチケット代をヴォランティア活動でまかなおう
電動で漕ごう
ゴミ箱の重さを量ろう
スーパーマーケットの店内でピック=ニックしよう
地球のことを思っておしっこしよう
ゴミ箱に潜ろう
週一菜食主義を実践しよう
国際連帯休暇を取ろう
球根テロを企てよう
CO2の節制に、宗教上の節制を活用しよう
星たちを再び輝かせよう
通りの名前を変えよう
サイクロヌーディスタ(自転車裸族)に加わろう
あなたのショッピング・カートを“GMO(遺伝子組み換え作物)フリー”な商品で満たそう
共和国(フランス)を修繕しよう
山頂を塗り直そう
あなたのキーボードで反乱を起こそう
フライド・ポテト(フリット)で走ろう
あなたの犬を“犠牲”にしよう
社長を監禁しよう
職場で昼寝しよう
スロウ・カルチャーにしよう
茶色の“砂金採取”を支援しよう
親切になろう!
静寂をストックしよう
エコロ=ジック・ムーヴメントをフォロウしよう
別のサッカーをサポートしよう
山羊で刈ろう
自分をロカヴォアに変えよう
アンプラグしよう
携帯電話の価値を上げよう
あなたのネット・サーフィンを緑色にしよう
グリーンバードの群れで飛ぼう
素っ裸で旅しよう

・・・興味のある方は、ぜひ、お読み下さい。

長くなったので、今日はこのへんで。類書のない(だから本屋さんが扱いに困っている・笑)本なので、もう少し説明した方がいいこともありそうですから、また、そのうち追加で宣伝します。

お読みになった方の感想ツイートを見つけたら、
でもリツイートします。

みなさん、どうぞよろしくお願いします。

※追記(02.13)

『コンバ』に出てくるワード集はこちら。

1.23.2013

ここ最近の楽しい仕事

■結局今度の本『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』にここ数ヶ月間、ほぼかかりっきりだったわけですが、でも他の仕事もいくつかはやってたわけでして、またしてもそういう自分の仕事の宣伝をしないまま年を越してしまいました。
世に出たタイミング的に最新のものから遡って、ここしばらくの仕事の一部をメモ的に。
3日前に発売になった『ミュージック・マガジン』02月号のコラム〈ポイント・オヴ・ヴュー〉に1本、書いてます。〈脱原発の立場から、この前の総選挙の結果をどう受け止め、今後どのように行動するべきか?〉というテーマを編集部から投げられたのですが・・・

(前略)ぼくは話の前提となる選挙制度自体を信用していないから当然その結果もハナから重視しないことと、編集部の意向に従うまでもなく、お生憎さまだが〝推進派〟の読者には全く配慮しないことだけ先に述べて話を進めるが、つまりそんなわけで、選挙結果で反原発派が落胆する必要などないのだ。(後略)

てな2000字弱の原稿を書いてます。


その一号前、表紙にきゃりーぱみゅぱみゅとボブ・ディランが一緒(なのが傑作)の2013年01月号では、恒例の昨年のベスト・アルバムを選定してます。ぼくはおなじみ大石始さんと合議で〈レゲエ海外〉〈レゲエ国内〉のベスト・アルバム各5選。それからレゲエ以外から選んだ2012年の鈴木孝弥個人ベスト10選。



昨年末にリリースされた話題作、ジンタらムータ with リクルマイ「平和に生きる権利」にコメントを寄せました。
このリンク先にそのコメント(肩書き付けるの忘れてオレだけ偉そう・笑)も載ってますが、そんなことより、この曲の詳細なインフォもあるし、プロモ映像も観られます。素晴らしい歌と演奏なのでコメントにもあんな風に書きました。でも本当に、聴くたびにギュッと胸が締めつけられる。そこに痛みも伴うんだけど、その痛みを誤魔化さず、逃げない、癒し(←という言葉は、オレは滅多に使わない)の鼓舞に満ちている。昨年末以降、我々にはこの曲がある。みんな、一緒に聴こう。カバンの中に入れて、この曲を持ち歩こう。


『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』の発売が結局年をまたいだことと、オレが12月のローリング・ストーンズのデビュー50周年記念公演のチケットを(ニュー・ジャージー公演もブルックリン公演も)買えなかったことは、全く無関係ではない。どこか1枚でも買えたらニュー・ヨークに飛ぶつもりだったので、本のデータは12月上旬までに印刷屋に入れられる状態に仕上げようと思っていたのだが、11月のチケット発売日にUS《チケットマスター》にアタックしても、ネット回線大混雑。結局アクセスできて買える権利を得られたのは800ドル(!)の特等席だけだったのであきらめ、オレを追い立てるものがなくなったことで本のカヴァーまわりや紙選び等々、じっくり時間をかけた結果、印刷屋さんに入れるのが年末になったのだった。
そんなN.Y.のチケットも狙ってみたりする程度のローリング・ストーンズ好きではあるけれど、仕事でストーンズの原稿を書く機会を与えてもらえるほどの立場では全然ないので、11月に発売になった『レコード・コレクターズ』1月増刊号『ローリング・ストーンズ名曲ベスト100』では、いち読者としてアンケートに応募してみた。あなたのベスト10曲リスト&1位の曲についてのコメントを書いて送って、というヤツ。そしたら〈東京都・鈴木孝弥〉さんとして自分の1位の曲のコメントを採用してもらえた。やった!(で、オレのストーンズのベスト・ソングは、ずっと昔から「Monkey Man」)。――つーか、こんなの“仕事”じゃないわけだけど、東京都港区の区議に鈴木孝弥さんがいるんで(そっちは、すずき・たかや さんだけどね)、自民党員がこんなグロでドラッギーなコメントを書いたのか? って噂になると彼に間違いなく迷惑かかるんで、ここに書いときました。






こっちは『ミュージック・マガジン』&『レコード・コレクターズ』プリゼントの増刊『定盤1000』。『ミュージック・マガジン』600号記念企画として、同誌の11月増刊号として発売になったものですが、中のレゲエ枠を担当しました。ぼくの考える究極の定盤33枚を選び(選ぶというのは、すなわち落とす作業なので、そこはツラかった)レヴューしてます。しかし、これがオール・ジャンルから選び抜いた定盤の1000枚だ!という堂々たるコンセプトの迫力は、ペイジをめくってるだけでガツンとくる。聴いたことのない作品が多ければ多い人ほど、この本は楽しい。


10月下旬にリリースになった小泉今日子デビュー30周年記念盤『Koizumi Chansonnier(コイズミ・シャンソニエ)』の中の1曲、菊地成孔プロデュース曲「大人の唄」で、歌詞のフランス語を作りました。菊地さんの書いた歌詞を部分的に仏訳したのですが、菊地さんの日本語の深み・言葉の裏側の影の部分がどうやっても(フランス人に相談しても)仏語に置き換えられない箇所は、菊地さんに了承を得て表現を創りました。そんな風にして書いたフランス語フレイズの一部が飾り文字としてジャケットの中央(タイトル下)に使われてます。ファン冥利に尽きるとはこのこと。肝心の楽曲の方も実にかわいらしい仕上がりで、その中に菊地さんらしい“スパイシー”なセンスが随所に利いています。形に残ったものの中で、ああフランス語を学んでよかったな、と、これまで一番実感した仕事は、マヌ・チャオに直接インタヴューしたことと、この小泉さんの録音に関われて、自分の仕事がジャケの真ん中に使われたことだろう……。



とか、うっとりしてる場合では、実はないのであって、とにかくみなさんに知っていただきたい『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』もフランスの本です。この本を紹介できることも強烈に意義深いことだと思っていますし、ホンヤクティヴィストとして今、やっとくべき仕事をちゃんとしたつもりです。おかげさまで、先週よりリアル書店で先行発売中。「目立つけど、何の本か分からない」というご意見をたまわった書店さんが数軒ある以外、おおむね、よい反応をいただいてます(って書くんだよね? こういうとき・笑)。
で、ネット書店でも販売開始になって落ち着いた頃に(来週とかに)この本のことを改めてきちんとお知らせします。ああそうだ、この本の関連で先日、東京下北沢は対抗文化専門古書カフェ気流舎のZineにも6000字ほどの原稿を書いたのだった。これも、オレ以外の寄稿者のテクストを読むのが楽しみで、できあがりを心待ちにしています。


1.15.2013

雪の日の日記

■昨日の大雪の中、かれこれ20年来の友人で、パリから帰郷中のジャーナリスト、佐藤久理子とランチした。

場所は《農民カフェ》学芸大学店(東京都目黒区)。下北沢店には行ったことがあってとても好きな店だが、二号店が学芸大学(駅)にも出来たというので行ってみた。といってもオーナーの和気優さんはそもそもくりちゃんのお知り合いで、その関係で下北沢の《農民カフェ》を知ったのだったが。


で、このランチ・プレイトがまたおいしいんだよ。普段、脂っこいものとか刺激物がガンガンに好きなオレも、ときおりヴィーガン・レストランに行く趣味もある。動物性の味(旨味)に頼らない野菜料理は、当然その素材の滋味を味わうのと同時に、その調理法の“工夫”がごちそうだ。プレイトになっていると、素材ごとの味の違いを引き出す技とアイディアがいろいろ体験できるのがとても楽しい。

前回下北沢店で食べたランチ・プレイトはヴィーガンだったけど、学芸大学店で昨日食べたものは、ほんのちょっとだけ肉を使っていた。食べたくない人はオーダー時にそう言えば、きっとそこだけ別の一品と変えてくれるんだと思う(下北沢店でも、夜の酒場営業時には肉を使った料理も出す)が、それでも95%ヴェジなプレイト。左は付いているスープで、赤カブのボルシチ風な感じのもの(写真のヘタさのせいじゃなく、つまり本当に赤い。ほんのり甘苦い、こっくりとしたうまさ!)。

くりちゃんとの話は密談なので書けない(笑)。和気さんを交えたディスカッションも有意義だった。

で、オレは彼女にできたてホヤホヤの『コンバ』(今日明日くらいから順次書店に流れるはず)をあげたが、彼女はアンヌ・ヴィアゼムスキーの新刊『ユナネ・ステュディユーズ』と、くりちゃんの友人の写真家リシャール・デュマ(Richard Dumas)が撮ったジャン=ピエール・レオーのポートレイトをおみやげにくれた!!!


ゴダール作品(『中国女』↓『ウィークエンド』〜ジガ・ヴェルトフ集団作品)で有名な俳優で自らも映画を作り、作家でもあるアンヌ・ヴィアゼムスキーの昨年フランスで話題になった新刊は、彼女が『男性・女性』を観てゴダールにファンレターを送るところから始まって、二人が激しい恋に落ち、1967年の『中国女』に起用され、結婚に至る時期について書かれたもの。小説とはいえ、ほぼノン・フィクションに決まっている(ざっとめくっただけでもブレッソン、ロッセリーニ、ラングから、ラ・ヌーヴェル・ヴァーグ関係者の面々が実名で登場するし、もちろん68年5月革命に向かう“政治の季節”ならではのくだりとして、5月革命の重要拠点となったパリ第10大学(ナンテール)の構内でダニエル・コーン=ベンディットがヴィアゼムスキーをナンパする場面が出てきたりする!)。ダニエル・コーン=ベンディットの名前は『コンバ』にも出てくるよ(くりちゃん、ありがとう!)

なんかiPhoneを買ったら、いきなりブロガーっぽいブログを書いてみたくなった(笑)ので、実行してみました。結構楽しいな。



1.08.2013

『コンバ』、著者はこの人


イラストはこの人、原田淳子。
http://www.geocities.jp/harada_kikaku/

(写真:タケウチミホ


装幀は『だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ?』に引き続いてこの人、Saori@wsra 。
https://twitter.com/wsra


1.05.2013

原発推進派に“ショック”を与える発言集

■新しい年を迎えたので、最初の話題はこの、希望に満ちたものにしようと思う。

昨年末、世界中の原発推進派に“ショック”(←ベルギーのTV報道での表現)を与えたのが、ベルギー原子力安全局長のウィリー・ドゥ・ルーヴァラー(Willy De Roovere)が退任を前にして語った発言だった。原発安全の責任者自らが、「私は別のエネルギー形態を選ぶ」と発言したのだ。

下に訳出した、その発言を機に書かれた『ル・モンド』の記事は、福島第一の事故以降、ベルギー、スイスやフランスの原発推進の“強硬派”だった人々ですら、それまでの意見を改め始めていることを報じたものだ。記事内の彼らの表現が、それぞれの国の原子力ムラ内部の圧力、バイアスで割り引かれていることを想像するなら、彼らの心境はもはや、“原発ダメ。ゼッタイ。”モードに入っているかもしれない。

科学は、当然ながら、ユニヴァーサルだ。先の総選挙の結果を、脱原発に向かう流れの否定として理解したい人も多少はいるのだろう。だとしたら、そんな人の中で、識者たちが勇気を振り絞って(←おそらく)行ったこれらの発言の重大性、その価値を否定できる人がいるだろうか? 


《懐疑の時代に入った原子力》

2012年12月28日付け『ル・モンド』。(太字はオレ)

1979年のスリー・マイル・アイランドや、1986年のチェルノブイリの事故のあとでさえ、ここまでの発言はなかった。原子力の守護者たち(中でも最も熱烈な部類の人たちまでも)が、彼ら自身が長きに渡って目を閉じたまま擁護してきたエネルギーの“素晴らしさ(エクセレンス)” を疑い始めるのに、2011年03月11日、福島の原子力発電所の大惨事まで待たなくてはならなかったということなのだ。

一番最近、それについての疑念を表明したのはベルギー原子力安全局長:ウィリー・ドゥ・ルーヴァラーだ。「私たちは、原子力のリスクを、この期に及んでなお許容できるのかどうか、疑ってかからなくてはなりません。心の底から正直に申し上げますが、私がそのリスクを注視するならば、私は別のエネルギー形態を選ぶでしょう……」。彼は、今年一杯での退任に際し、クリスマスの前日にこのように告白した。

これまでの主張から方向転換したのは彼だけではない。ベルギーやドイツと同様に核エネルギーからの脱却の計画を立てたスイスでは、元スイス電気事業者協会の会長であり、名声ある原子力技術者でもあるジャック・ロニョン(Jacques Rognon)教授が、2011年に、もう原子力は信じない、との考えを明らかにした。その理由として、費用がかかり過ぎること、複雑過ぎること、プラント周辺住民との間で“受け入れ問題”が多過ぎることを挙げながら、深層地熱のような他のエネルギー源によって今や既に現実のものとなってきている発電技術の革新を強調した。

今も大きな国民的合意に基づくものとして原子力エネルギーが存在しているフランスでも、原子力の安全性を謳う“教条(ドグマ)”は、もう通用しない。原発技術を開発した張本人である、エコール・ポリテクニック(*)のOBたちもその認識を同じくしている。
「慎重を期したところで、原子力事故は必ず起き得る」――2012年01月、フランス原子力安全局長のアンドレ=クロード・ラコスト(André-Claude Lacoste)は、そう認めていた。
(*訳註:フランスの理工系エリート養成のための高等教育機関。ナポレオンがその学生を自分の支配下に置くために軍の所属とした学校で、現在も国防省が所管する)

彼の同輩のひとり、放射線防護・原子力安全研究所所長のジャック・ルピュサール(Jacques Repussard)は、「福島は、“想像を絶することを想像すること”を強いるものだった」と表現した。

それらは、テクノロジー先進国で起きたカタストロフィーに衝撃を受けた“悔い改め”の言葉なのだろうか? それだけではない。

原子力発電のコストの問題、それもまた、確実性のかなりの部分をぐらつかせている。原発の擁護者たちが、自分たちのエネルギーは二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーだということを全面に押し出すのはもっともなことだ――地球温暖化がどんどん重大な脅威となっていく現在、それはひとつのキー・ポイントなのだから。しかしながら、それと並んでもう1枚の彼らの“有力なカード”である費用の安さに関する主張は、それこそどんどん切り札としての威力を失ってきている。

安全確保のために、あるいはキロワット時あたりの長期的な価格保証の難しさを補うために、新たに必要とされていく費用について多くの専門家が試算したところ、このまま原発を使い続けるためには、原子力エネルギーから脱却するのと同じだけの高額な費用がかかるという。

(以下、フランス国内の具体的数字や事情に関する部分、中略)

原子力は長い間、“大物”科学者たちによって支えられてきた。ところが、科学理論の中で、反駁を許さない知見などないのだ。他のエネルギーに適用しているのと同じ科学的厳格さと正統的経済学を適用して、原子力が再検討されんことを願う。★★★