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3.27.2013

ローリング・ストーンズの20年前に「ハーレム・シャッフル」をカヴァーした男

■03月25日、好事家としては、ちょっと楽しみにしていたソウル・ヴォーカル・トリオがデビューした。その名は《Vigon Bamy Jay(ヴィゴン・バミー・ジェイ)》。アルバム・タイトルが「Les Soul Men」というベタさで、それにこの宣材写真じゃ、老いらくによる『Les Soul Men』という名の青春再生映画のポスターに見えちゃうのだが、これ、3人とも歴としたフランスのソウル・シンガー。


その3人が組んで制作したアルバムが、またソウル〜R&B名曲集という、これまたぞっとしない“売らんかな”企画。レコード会社が昔のグループを再結成させたり、ベスト盤、企画盤を乱発してなんとか食いつながなくちゃならない苦境は世界共通だ。

でも逆に考えると、この3人は、そういう企画を立てれば売れるだけの人気者、ってことなんだが、この中にぼくが前々からちょっとファンだった男がいて、こんな機会ではないと彼のことを紹介することもないだろうから、同好事家のために手短かに。

ぼくが好きなのは一番左の黒眼鏡の男ヴィゴン。彼は1945年にモロッコはラバで生まれた。現在67歳。モロッコ生まれのソウル・シンガーってわけだ。

で、彼の凄いところは15歳くらいでその歌唱力をパリで認められ、《バークレー》からレコードを出し、その後、ボ・ディドリーやオーティス・レディング、スティーヴィー・ワンダーやローリング・ストーンズのパリ公演の前座を任され、遂にはモロッコ生まれの18歳仏人歌手として、当時の《アトランティック》と契約するにいたったことだ。

その60年代の彼の人気を決定づけたといわれるヒットが、ボブ&アールの「Harlem Shuffle」のカヴァー。


これが1967年のパリ。当たり前だけど、“イェ・イェ”ばっかりじゃなかったのだ(実はR&B指向のフランスの歌手はたくさんいた)。

ローリング・ストーンズがこの曲のカヴァーをシングルでリリースしたのが86年だから、そのおよそ20年前のことになる。で、フランスでは、ストーンズの(ボビー・ウォマックがコーラスで参加してるという)あの名カヴァーを聴いたときに、みんな「あー、ヴィゴンのアレね」と言ったというくらい“ヴィゴンの曲”なのだ。それに60年代に、パリ公演の前座でヴィゴンが歌う「ハーレム・シャッフル」を、舞台袖でストーンズの面々が聴いていたかもしれないしね。

そして、これは同じくヴィゴンがそこから約45年後、TV局〈カナル・プリュス〉の特番で歌った現在の(!)「ハーレム・シャッフル」だ。



ご覧のように今の方がキョーレツにカッコいい、ってわけで、1949年生まれの名歌手エリック・バミー、あと(二人が苦しくなった高音部を担当するために・笑)パリ郊外の実力派若手ヴォーカル・グループ〈Poetic Lover〉のジェイを加えて、今回の《ヴィゴン・バミー・ジェイ》が誕生した。


リード曲は、これまたベタなモーリス・アルバート「Feelings」のカヴァーなんだけど、ダメだ、ベタすぎて単純なオレはまんまと持って行かれる。腹を見せて寝ころんでしまう。(少なくともこれ↓は大画面でどうぞ! 音も素晴らしいし、映像も美しい。ニュー・ヨーク、ロンドン、パリと、3大都市で色男が苦悩しまくる壮絶な失恋歌が展開されている)


歌い出しがグアドループ生まれのエリック・バミー、次が今風のパリの若者ジェイがネオ・ソウルの教科書通りに盛り上げたあとに登場する、イカしたオールドタイマー:ヴィゴンのフランス語パートが最高じゃないですか! カフェをかき混ぜながらフランス語でこのシャウトする絵が許される、つう。

おととい発売となったアルバムは、まだ日本ではフィジカルはおろか、ディジタル・リリースの試聴すらできないので、フランスのiTunesミュージック・ストアに行くしかないけど、まあ、ざっと試した感じ、3人のなかなかセクシーないい歌が聴ける。でも選曲はほんとベタ。その苦々しさも楽しさにできる、その意味でも気骨ある好事家向け。

2.13.2013

『コンバ』に出てくるワード集

『コンバ - オルタナティヴ・ライフスタイル・マニュアル』発売のお知らせ、全目次はこちら

今日は、本書(解説、あとがき含む)に出てくるワード・人名から主要なものをご紹介します。

▶▶▶オキュパイ We are the 99% アノニマス プッシー・ライオット(フェミニスト・パンク・ロック) ステファン・エセル『怒れ! 憤れ!』 ハクティヴィズム(ハッキング) ガイ・フォークス アンチAD クラウン・アーミー Think globally, Act Locally アクティヴィズム(直接行動主義) アーティヴィズム グリーン・ゲリラ カウンター・カルチャー ウィリアム・S・バロウズ バトル・イン・シアトル(バトル・オヴ・シアトル 1999) アルテルモンディアリスム(オルターグローバリゼイション) 養蜂革命 国境なき大麻 ピエール・ベルジェ 市民的不服従(ヘンリー・デイヴィッド・ソロー) パレオ・ダイエット 温室効果ガス 破格語法 アルテュール・ランボー COP15(コペンハーゲン・サミット) ネオフェミニスト 核兵器廃絶アクション(ボムスポッティング) バラク・オバマ ジョセフ・ロートブラット バートランド・ラッセル 行動か、さもなくば死か レミ・ガイヤール バイコット(Buycotte) コンシュマクター フラッシュ・モブ ボイコットBP グリーンピース(Greenpeace) テイト美術館を解放せよ(Liberate Tate) (エコロギーク)エレクトロニクス・ガイド 任天堂 東芝 ソニー エコ・バッテリー ソウシャル・コリオグラフィー レディー・ガガ・デモ LGBTプライド運動 リップダブ ネット市民権 AVAAZ.org カーボン・オフセット ANA(全日空) バイオ燃料 レジスタンス シャルル・ドゥ・ゴール主義 連帯キセル iPhoneアプリ タックス・ヘイヴン 新自由主義 バンクシークレッツ(www.banksecrets.eu/) 城南信用金庫 Move Your Money 舞踏テロ サンドラ・アブアヴ ヴァンサン・セスペデス IKEA 野宿者 エイズ ジェネリック医薬品 海賊党 ジミー・チュウ スシ・セレクター プレゼント免除証明書 空気浄化植物 アドバスターズ(広告破壊者集団) 無買デー(Buy Nothing Day) シテュアシオニスト ギー・ドゥボール ポップ・ダウン・プロジェクト トランスジェンダー的実存主義 アクト・アップ! 死の見本市(Salon de la mort) リソメイション イスラム教ファトワー 授乳アクション カーボン・フットプリント 反GMO(遺伝子組み換え生物) モンサント オレンジの半分 ニセ新聞 イエス・メン(The Yes Men) 強制国外退去 国境なき教育ネットワーク Porn for the Blind 昆虫食 キス=イン M.I.E.L.(性的衝動に関するエコロジーのための国際運動) ヴィルヘルム・ライヒ ベス・ディットー(ゴシップ) グリーン・カード 連帯貯蓄 ストップ・ショッピング教会 DIY ハッカースペイス バイク・ブロック ブラック・ブロック テリー・ギリアム(モンティー・パイソン) シュピール・グート グラスフェミー ダンプスター・ディップ 心理地理学 ドク・ジネコ グローバル・オーガズム・フォー・ピース  World Water Day グルーチョ・マルクス 緑の党 ダニエル・コーン=ベンディット ジョゼ・ボヴェ ドライ・トイレ グリーン・ウェディング・プランナー パクス(PACS フランス婚) ビオナニスト エコセックストイ SMSメッセージ ブーブクウェイク(おっぱい地震) バンクシー スペイス・インヴェイダー ゼウス リヴァース・グラフィティー(グリーン・グラフィティー) ポール “ムース” カーティス ケルヒャー グリーン・ヴァンダリズム イケア・ハッカーズ ルパンタンス 鈴木杏里 アルジェリア戦争 ルワンダ・ジェノサイド フランサフリック フェア・トレイド セクシャル療法 Park (ing) Day 性のアシスタント ロックコーア・プロジェクト ダヴィッド・ゲッタ ヤニック・ノア 電動アシスト自転車 自転車共用サーヴィス リサイクリング リサイクル・バンク 分別ポリス オリヴィエ・ブザンスノ(反資本主義新党) カルフール ユロ(尿)・エコロ フリーガン(Freegan) 週一菜食主義 ミートアウト・デイ ポール・マッカートニー 国際連帯休暇 国境なき発展 アレヴァ(アレバ) 球根テロ ゲリラ・ガーデニング エコロ=ブラックアウト ネオン団 トマ・サンコマ ルベン・ウム・ニョベ ガンベッタ ルイーズ・ミシェル 自転車裸族(サイクロヌーディスタ) ワールド・ネイキッド・バイク・ライド 国民アイデンティティー ブラック・ブラン・ブール 富士山 スティーヴン・チュー マイクロ=アクティヴィズム プラシーボ エドワード・アビー 爆破/モンキーレンチギャング サボタージュ エコ=アクティヴィズム 監禁用特製サヴァイヴァル・キット リーマン・ショック アラン・マンク マイクロ=シエスタ スロウ・カルチャー スロウ・ブック うんち紙(poopaper) 下水熱 親切の日 セロトニン アメリ オーディオ=エコロジスト ソイレント・グリーン エコロ=ジック(エコ音楽)・ムーヴメント レディオヘッド エスカ・ヨーン(アスガー・ヨルン) グラスゴウ・アナキスト・サマー・スクール スリー・サイデッド・フットボール ジネディーヌ・ジダヌ ロカヴォア フード・マイルズ(フード・マイレージ) ゼロ・eメイル・フライデイ アンプラギング・デイ 持続可能な開発(SD サステイナブル・ディヴェロップメント) ヴェオサーチ CO2スタッツ グリーンバード ナイキジャパン 宮下公園 スウェットショップ ナイキ・ブランケット・ペティション セキュリティー・チェック・ポルノ ネイキッド・エアー END:CIV etc.
  

12.29.2012

ノー・コメント

■これ、明日の日曜のイヴェントです。
このフライヤーを見るに、怪し過ぎて一切のコメントがはばかられます。ピンとくる人だけ勝手に行って下さい(すべての人に対してオープンです。それだけ記しておきます)。
ぼくはビビりなので、このフライヤーじゃ怖くて行けません。


8.18.2012

プッシー・ライオットを支持します

■実刑!? 世界は黙っていないだろう。ロックとジーンズの流入からソヴィエト連邦の崩壊が始まった記憶から、あの国はロックの怖さを知っている。逆に言えば、日本と違ってロックが“正しく”機能している国とも言えるが、それにしても、こんな判決を放っておいてはいけない。

ロシア女性バンドに禁錮2年=「反プーチン」で異例の実刑

時事通信 8月17日(金)21時32分配信

【モスクワ時事】プーチン大統領が当選した3月のロシア大統領選前に教会で反政権ソングを演奏し、逮捕・起訴された女性パンクバンド「プッシー・ライオット」のメンバー3人に対し、モスクワの裁判所は17日、禁錮2年(求刑禁錮3年)の実刑判決を言い渡した。過去の屋外パフォーマンスは微罪で罰金刑だったが、異例の実刑となった。
 3人は「マリア様、プーチンを追い出して」と歌い、モスクワの救世主キリスト教会を冒涜(ぼうとく)したとしてフーリガン(暴徒)罪に問われた。裁判官は「宗教的な憎悪と敵意に基づく行為」と非難。昨年12月の下院選不正疑惑を機に始まった一連の反政権運動に対する最も重い刑事罰となる。
 プーチン氏に近いロシア正教会のキリル総主教を激怒させたことが、裁判に影響しているとされる。メンバー側は「道徳的な過ちがあった」と反省の弁を述べつつも、「市民の政治活動を制限する抑圧キャンペーンだ」と政権側を批判し、無罪を訴えた。
 3人の裁判をめぐっては、脱税事件で投獄された元石油大手ユコス社長ホドルコフスキー氏以来の「政治弾圧」とも指摘され、国際人権団体が釈放を要求。米歌手マドンナさんや元ビートルズのポール・マッカートニーさんも支援を表明した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120817-00000088-jij-int

「マリア様、プーチンを追い出して」



08月17日 ロンドン Reuters/NEIL HALL




6.28.2012

ジェロニモレーベルでスカッとする

■世の中が悪くなると、ジェロニモレーベルはどんどんよくなるし、今回は特に、聴くたびにスカッとさせてくれる。
今年の新作『Negative』は、ほぼすべて“The 311”以降の世界観を、直接的間接的に歌っているが、そのもやもやした煩悶の歌詞や呪詛も、オレの中のもやもやとスカッとシンクロする。そして曲の進行とともに、そのもやもやを2秒前、3秒前の過去に少しだけ置き去りにできてる気になる。
それは一種のカタルシスであり、またしても忘れかけてた深呼吸であり……歌詞に共感し連帯に身を置く行為が自分のエンジンになってることを実感する瞬間だ。
「気ぃ狂って当たり前」な状況なんだと気づくことは、何よりも気持ちを楽にさせ、正気を取り戻させる。あ、そうか、狂ってるのは、TVを観てる側のオレの頭じゃないんだと。

『Negative』と、自分の中のネガティヴさは乗法作用を為す。だから“The 311”以降の原発問題に一切ネガティヴな感情を抱かない人は、このアルバムは聴かない方がいい。

この新作に入ってる「ナメられてるにもほどがある」は、ここでも紹介したが、“フロントライン=”大飯テント村ヴァージョンのヴィデオも出来上がった。そこには日本各所の最新のライヴ映像がエディットされている。福島にも何度も行き、そしていつも日本中のどこかを駆け回って歌い、30日にはまた大飯に行くそうだ。その野生動物のような機動性としつこさが、他の何にも似ていないロックンロールを奏でている。


01. ヘラヘラしてたかった 
02. ナメられてるにもほどがある 
03. 景色が壊れた
04. ネガティブ
05. 気ぃ狂って当たり前
06. FUKUSHIMA311 
07. 難民

〈アルバムPV〉




〈ナメられてるにもほどがある〉




〈ナメられてるにもほどがある/大飯テント村ver.〉



6.20.2012

素晴らしいレーベルの、素晴らしいフリー・カセット音源

■ヒップ・ホップ、ファンク、ソウル、アフロ・ビート、エレクトロニカをまたぐラインナップが最高の、ぼくの大好きなドイツ(ケルン/ベルリン/マンハイム・ベイス)の《Jakarta Records(ジャカルタ・レコーズ)》http://www.jakarta-records.de/


が、そのリリース40作目を記念して、フリー・カセットを配布する。同レーベルのサンプラー的内容で、かつ未発表音源も満載で無料。ドイツのレコード屋で限定数配布されるけど、もらいに行けない人は、それがまるまるフリー・ダウンロードできる。

《ジャカルタ・レコーズ》の看板アーティストは、まずはガーナ出身でブルックリンで活動するブリッツ・ジ・アンバサダー(Blitz The Ambassador)だろう。フェラ・クティのアフロビートとホーンのフィーリングを継承した生管楽器バンドを従えて活動する彼は、アルバム『Stereotype』(2009)で注目を集め、去年の『Native Sun』も最高だった。ぼくは昨年作を『ミュージック・マガジン』の2011年個人ベスト10の“4位”に選んだが、先日それの日本盤が出たのでチェックして欲しい。これ→ http://plankton.co.jp/392/index.html 

そのブリッツ・ジ・アンバサダーと並んで《ジャカルタ・レコーズ》の一押しは、ドイツのフィメールMCアクア・ナル(Akua Naruだ。原初的なヒップ・ホップの質感と、そこにしかない洒脱さの奥に、ネオ・ブラック・ディアスポラ運動の静かな高揚感が聴き取れる。この〈ネオ・ブラック・ディアスポラ・ムーヴメント〉は、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、カリブなど、様々な拠点で活動するアーティストによる、様々な趣向のビート/アプローチをより集めてアフリカを指向しているこのレーベルの、いわば隠れテーマだと感じる。高い評価を得たアクア・ナルのシングルも(この“カセット”とはまた別に)フリー・ダウンロードできる。クリップもキュートだ。



The World is Listening 12"(Free Download)

この曲もいい!
The Backflip 12"(Free Download)

あと、ぼくの好きなところでは……カリフォルニア/オークランドの人気ヒップ・ホップ・バンド:クラウン・シティ・ロッカーズ(The Crown City Rockers)のMCラーシャン・アーマッド(Raashan Ahmad)も、ソロ次作を《ジャカルタ》から準備していて、で、今回のカセットにも入ってる。

それから、今回の“フリー・カセット”音源の中で今一番話題になってるのは、エチオピア・ファンク・ファンが瞠目した、ニュー・ジーランドのバンド:将軍オーケストラ(Shogun Orchestra)による、「佐藤さん(Sato San)」というタイトルの曲だろう。ここはJahのおられるJahPanなんで、さもありなん、というのもあながち冗談じゃなくて、このショーグン・オーケストラ、レゲエと無関係ではない。


このバンドは、レゲエ・ファンには有名なファット・フレディーズ・ドロップ(Fat Freddy's Drop)や、ぼくがここ(音楽夜噺)で紹介したブラック・シーズ(The Black Seeds)という、ニュー・ジーランドの人気レゲエ・グループのメンバーが組んだもので、そんな彼らが今回はレゲエではなく、ハイチでアフロ・グルーヴなサウンドを録音する、という趣向の作品だったのだ。そのLP(セルフタイトル盤↑)はちょっと前に日本に入ってきて、好き者たちが話題にしてるよね(LPとディジタル・リリースのみで、今のところCDのリリースはないようだ)。


この《ジャカルタ・レコーズ》は、死語になって久しい〈レーベル買い〉という言葉を久しぶりに思い出させる。そのアウトラインを手早く聴きたければ《サウンドクラウド》と、この“フリー・カセット”音源でバッチリ。

“一流”レコード会社が政治屋と組んで、ダウンロードやリッピングの規制に躍起になってる国があるかと思えば、その考え方と真っ向から対立する海賊党が議会に議席を得る国々がある。で、そうしたテクノロジーを使ってディジタル・リリースもやりながら、LPだってプレスするし、フリー・カセット・テイプも配って、「ハイテクにばっかり頼らずに、楽しくラジカセでも聴いて、忘れてた何かを思い出してくれ」、っていう粋なことをやるドイツのレーベルもある、って話。……しかし“一流”レコード会社って、図体デカいと守るものが多くてダメね。結局あの人たちの守ってんの、音楽とか文化じゃないもんね。楽しくクリエイトしている活き活き感がないでしょ。で、リスナーを悪者扱い。私たちは被害者です、っていうふてヅラから、ネガティヴなオーラがドバドバ出てる。

オレは楽しそうに音楽を作り、慎ましく暮らし、余裕ができた分は、まずみんなを楽しませることに使う、っていう《ジャカルタ》みたいな音楽ビジネスが好きだね。気持ちよくサンプルを配るレーベルの商品って、結局のところ、気持ちよく買える。そういうものでしょ。



このリンク(↑)先のカセットのジャケをクリックするとダウンロード・リンクに飛びます(FLACもあり)。

12.27.2011

アジズ・サハマウイ&グナワ大学


■アジズ・サハマウイ&グナワ大学の最新ライヴ映像を見つけた。
パリの《Radio Nova》の夕方の番組での、先週のスタジオ・ライヴの模様。

モロッコ生まれの彼が、フランス移住後に組んだオー・エヌ・ベー(オルケストル・ナシオナル・ドゥ・バルベス)の中心メンバーのひとりとして強烈なマグレブ・フュージョン・サウンドを引っさげてメディアに登場した1995年、ちょうどパリで彼らのフリー・ライヴを観て衝撃を受け、ファンになった。で、ONB自体はその後も何度か観たけれど、デビュー当時の爆発的な躍動感を凌ぐ演奏は聴かれず、今やアンサンブルが洗練され過ぎてしまった感が否めない。

その一方で、アジズ・サハマウイの初ソロ作品となった今年のアルバムは素晴らしかった。ここで見られる映像はアルバムの3曲目に入っていた「Ana Hayou(アナ・ハユー)」で、ベイスが沈んでいるのが少々残念だが、ゴツゴツと角張った生っぽいビート感にそそられる。サハマウイの太い歌と、他メンバーとの掛け合いもいいし、とにかく画的にカッコいい。つーか、夕方6時台にラジオをつけると、こういう生演奏が流れてくるなんていいよね。


アルバムのインフォ:

ここではアルバムのプロモ映像が観られます。
これも今年何十回も聴いたアルバム。出た当時、すぐにピーター・バラカンさんも『バラカン・モーニング』でプッシュしていた。

12.25.2011

『ミュージック・マガジン』2012年01月号

■こんな年でもやってくる、年末のお楽しみ、『ミュージック・マガジン』1月号。

(この他の記事など、内容詳細は http://musicmagazine.jp/mm/ 

例によって今年1年のベスト・アルバム特集号なので、これを見て今年(2010年12月01日~2011年11月30日)リリースされた作品の中で、未聴かつ興味の湧くものを買いに行く、というのが年末の過ごし方だ。

ぼくは毎年のように〈レゲエ(海外と国内それぞれ)ベスト5〉を大石始さんと合議し、それから〈個人のベスト10〉も選んでいる。

もちろんその内容はここには書かないが、ひとつ〈個人ベスト10〉で個人的に興味深い現象があった。そのリストには1位~10位という番号が振られているわけではなく、“今年の10枚”を発表しているみなさん(上記写真参照のこと)は、その10枚をアーティスト名のABC順で並べたり、(大半の人は)順不同として並べたりしてるんだけど、ぼくは毎年ボクシングのマスト・システム採点法のように、敢えて順位をつけて上から並べている――“お祭り”企画を、自分でより徹底的に楽しむための方策として。

で、蓋を開けてみたら、今年のぼく個人のベスト10枚の上位5枚が、他の誰の〈個人ベスト10〉とも見事に1枚もカブっておらず、そして〈各ジャンル別ベスト・アルバム・チャート〉の中にも全く入っていない。つまりこの『ベスト・アルバム 2011』に参加した選者のどなたも選んでいない5枚を自分の1位~5位にしているわけで・・・よほどオレの耳が悪いのか、好みがオリジナルなのか、その両方か、ということだろう。

でも6位~10位までの5枚はすべて他の方々と激しくダブっているし、ワールド・ミュージックやR&Bやハウス・テクノのジャンル別ランキングにも入っているものばかりだった。

ということで、そのぼくの"オリジナルな"個人ベスト1~5位までの中から、1枚だけならここでバラしても叱られないだろうと思い(『マガジン』にジャケ写も載ってないヤツだし)、そこから1曲だけ紹介したい。

もしかすると、今年聴いた回数も1番多い曲かもしれないし、ぼくの頭の中で鳴り響いた回数も一番多い曲だと思う。フランスのプロデューサー&マルチ器楽奏者の Tom Fire がジャマイカのヴェテラン歌手ウィンストン・マカナフの息子をヴォーカリストとしてフィーチャしたヒット・チューン。彼のデビュー・アルバム『The Revenge』に入っている「Brainwash(洗脳)」という曲で、歌い出しはこんな歌詞だ。

Brainwash the whole world
Putting people under pressure
Turning men into business
Women into pleasure

They try to take our voice and even our face
Even try to whipe out our race
The devils in their mind and greed corrupt their heart
Power has them sick like a poison
2000's not enough they want 200 more years
But we no longer give long affairs

Brainwash
it's a serious thing
Pressuring my people
In your world of sins...

今年は、とにかくあいつらのマインド・コントロールのえげつなさに戦慄を覚えた1年だった。フライング・ダッチマンの「ヒューマン・エラー」がオレの今年の1曲だけど、この曲も、ザクザクと心に突き刺さり、あるいは心を鷲づかみにされる曲だった。
話変わって、同じ号の『ミュージック・マガジン』の書評のペイジでは、名著『ジャズ喫茶に花束を』や、『レコードコレクターズ増刊 マイルス・ディヴィス・ディスク・ガイド』などでおなじみの、日本を代表するジャズのオーソリティーのおひとり村井康司さんが、12/20発行の拙訳書『だけど、誰がディジーのトランペットをひん曲げたんだ?』をレヴューしてくださっています。ありがとうございます!

それから日本を代表するジャズ・ミュージシャンのおひとり菊地成孔さんも、ご自身のブログで同書をお褒めくださいました。ありがとうございます!

それから、出版元《エディシオンうから》のfacebookペイジもできました。
この本に関する情報や、ジャズの小ネタなんかが随時アップされていますので、どうぞご覧ください。

11.28.2011

今年の1曲

■先週、『ミュージック・マガジン』の今年の《レゲエ・ベスト・アルバム(国内・海外各ベスト5)》の選出のための合議を大石始さんと行いました(昨年12月01日から今年の11月一杯までが“今年”という設定です)。その結果は、同誌2012年01月号(12/20売り)に掲載されます。
それから、同じ号に載る、今年の個人的なベスト10も選び終えました。そこで選ぶのはシングルでも映像作品でもいいのですが、ぼくは自分の例年の習慣で、すべてアルバム作品から10枚選んでいます。

それらはもちろんここには書けませんが、それらのベスト選出作業と同時に頭に浮かんだ(けど、そこには入れていない)、個人的な《今年の1曲》だけ、ここで紹介しておこうと思います。


Flying Dutchman「Human Error」
(フライング・ダッチマン「ヒューマン・エラー」)



この曲を聴き始めたら、なかなか途中では止められないだろうし、やるせない高揚感に突き動かされて最後まで聴き通した末に、多くの人が、ぼくと同じようにこれを《今年の1曲》に選ぶのではないかと思います。

http://www.fryingdutchman.jp/

8.06.2011

あきらめないぞ!

アシュカ・エ・レ・サルタンバンク(右側〈詳細プロフィール〉の中の、今年の気に入り音楽リストの中にも入ってる→→)の、大ヒット闘争賛歌「On lâche rien(オン・ラシュ・リアン)」に日本語対訳字幕がつきました。(C'un excellent job, mes lascars !!!)

これはぜひYouTubeに飛んで見て欲しい。

飛んだ先で触れられている本、『ミュージック・マガジン』増刊『プロテスト・ソング・クロニクル』(後日、ちゃんと紹介します)の中で、この曲を是非取り上げなくてはならないと思って原稿を書いたのはオレですが、それと同じ時期、全く相談も打ち合わせもなく、知らないうちに仲間たちがこの曲のヴィデオに日本語字幕をつけて日本人に見せようと考えて作業していた。で、アーティストに許可をとって、オフィシャルな日本人向けPVを作り、昨日公開されました。
こういうオレたちの“仕事”は、テレヴィでは放送されない(笑)。

この曲は去年の秋、フランスでサルコの政権が打ち出した年金改革法案に反対し(人口6千万の国で)300万人がゼネストを敢行、同時にパリ、モンプリエ他主要都市で数十万人規模のデモが何度も組織された際に大合唱され、彼の国の新デモ・アンセムとなった曲です(詳しくは『プロテスト・ソング・クロニクル』で)。そんで、この映像はそのときのパリのデモの様子。

さて、今日のデモの準備をしなくては(つって、集合場所への行き方を調べるだけだけど)。


4.15.2011

石田昌隆写真展 MUSICIANS IN THE SAME ERA 1986-2004

■石田昌隆さんの写真展、おととい行ってきました。
スゲー楽しかった !!! 


石田さんの著書『オルタナティヴ・ミュージック』(ミュージック・マガジン/↓↓↓)に使った写真の「オリジナル・データをインクジェット・プリンタでA3に出力したものです。銀塩プリントでは再現し得ない豊かなトーンが出せたと思います」ということで期待していたのですが、なるほど、あの例の〈RAW〉な石田ワールドが、さらに一段階、ドロリ、ぬるり、ガツンと迫ってくる、石田ファンの音楽好きにとっての至福の空間がそこにありました。
石田さんの好きな被写体のあり方と、その被写体自体から放たれるオーラのちょっとしたゆらぎ(ゆらいでいない人/写真もあるけど)とが、石田さんの鋭い機動性でつかまえられた一瞬に凝固した、麗しい〈紙ジャーナリズム〉の力を再確認させられます。
壁にプリントがペラリと貼ってあるプレゼンテイションも、何物にも囲まれたり飾られたりしない〈紙というメディア〉のプリミティヴな存在感を際立たせていて、紙好きは、こうでなくちゃね! と、足を踏み入れた瞬間に膝を打つ。

場所は南青山三丁目交差点(ベルコモンズ)から千駄ケ谷にのぼっていく外苑西通り沿いの〈タンバリンギャラリー〉。昼間こんなところを歩くことはめったにないのでぶらぶら散歩しながら行ってみると、西日の差し込むギャラリーの奥のテーブルでは、石田さんとサラーム海上さんが緑茶を飲みながらおはぎを食べている、というレアな場面に遭遇。そこに混ぜてもらい歓談していると、ほどなくオーバーヒートの石井社長がやってきたりして・・・港区と渋谷区のほぼ境目にある真っ白で瀟洒なギャラリーが、この写真とこの面々とでドロリと(失礼)ディープな空間になってるのがおかしかった。

とにかく、まだ行ってない人は、日曜17日の18時までですので、この週末是非。
バーニー・ウォーレル、ジョージ・クリントン&ブーツィー・コリンズの奇跡的スリー・ショットやら、マノ・ネグラやらセルジュ・ゲンズブールやら、びっくりする写真を前にすると間違いなく石田さんに何か訊きたくなりますが、質問にはとても丁寧に答えてくれますので、石田さんのいる時間にあたるといいですね。


4.09.2011

高橋芳朗 HAPPY SAD

■明日の日曜日、東京・高円寺で超大規模デモ、〈4.10原発やめろデモ!!!〉が行われる。多くの人に、参加を呼びかけたい!

詳細は前エントリーで:

んー、行ってみたいけど、これまで1度もデモになんか行ったことないし・・・と躊躇している人にぴったりの、かわいいデモ・ガイド、できました。

(無断転載・無断使用・無断再配布を推奨します。)

*******

デモのあと、明日から始まるTBSラジオの新番組に呼んでもらったので、その宣伝。

番組名《高橋芳朗 HAPPY SAD》

音楽ジャーナリストの高橋芳朗くんと、リポーター/モデル/ラジオパーソナリティの川瀬良子さんの出演する 毎週日曜18時30分から1時間半の生放送!の番組の、「グッド・フレンズ」というコーナーの第一回にバッド・フレンドとして呼んでもらいました。そのコーナーは番組の後半の20分らしく、〈ワンテーマで音楽の魅力をトリッキーに語り合う〉というものです。で、デモのあと、ってこともあるし、そのテーマは〈革命〉にしようと思ってます(フフ)。
聴ける方は是非、どうぞよろしくお願いします。

4.06.2011

レ・ヌビアンズ『Nü Revolution』本日発売!


■8年ぶりのニュー・アルバム、本日4月6日、日本盤先行発売!
新しい、ポエティックな、グルーヴィーな革命歌の数々。
掛け値なしのたいへんな傑作で、もしこれが去年リリースされていたら、個人的に昨年のオール・ジャンル総合年間ベスト・アルバムに選んでいた。もちろん、今年のそれになる可能性も充分にあります。

彼女たちが提唱する〈新しい革命〉とは何か? その考えに賛同し、自分から進んで日本盤の解説原稿を書かせてもらいました。歌詞も対訳もちゃんと付いています(これが正しい日本盤の姿です。解説+歌詞+対訳を収めたブックレットは全20ペイジに及びます)。ダウンロードは安いですが、ディジパックの作りも美しいし、その中にはアルバム全体についての詳細なオリジナル・クレジットがあります。それから、「“インディペンデント”であることは、“独り”であることを意味しない」という姉妹からのメッセージも載っています。是非、Pヴァイン・レコードから出た、この日本盤CDをお買い求め下さい。

フィーチャリング&コラボレイション・・・ジョン・バンザイ、マニュ・ディバンゴ、ブライアン・ジャクソン、フレッシュリー・グラウンド、ブリッツ・ジ・アンバサダー、エリック・ロバーソン、J.ピリオド、キャロル・リディック、テテ etc.

アルバム概要:

オフィシャル・サイト
(アルバム収録曲「Liberté」がフリー・ダウンロードできる)


こちらもアルバム収録曲、ヌビアンズ feat. ジョン・バンザイ
Veuillez Veiller sur Vos rêVe」(夢から目を離さないで。夢を眠らせるな。)


Veuillez Veiller Sur Vos Reves from kantarama gahigiri on Vimeo.


こちらも3.29に出たばっかりの、ジョン・バンザイのアルバム『Loverdose』。フィジカル・リリースはまだ。



アルバムに参加したブリッツ・ジ・アンバサダーの新曲「Dear Africa」の方には、逆にヌビアンズがフィーチャーされていて、それも、ブリッツのジャカルタ・レコーズのサイトからフリー・ダウンロードできる。


3.05.2011

ADF 東京公演三行速報

■久しぶりに、前後両脇の人の迷惑になるくらいはしゃいだなー!
名古屋・大阪近辺の人、迷ってるなら行ったほうがいいよ。
スゲー、スカッとした。スゲー、シャキッとした。

(これじゃ全然ライヴの中身を報じてないけど、ちゃんとしたライヴ・レヴューは、04月20日売りの『ミュージック・マガジン』に書きます)


3.04.2011

'A History of Now'

《エイジアン・ダブ・ファウンデイション・ジャパン・ツアー2011》

■Tonight !!!  楽しみだ !!!




2.02.2011

Time for a Nü Revolution


■素晴らしい7曲入りEP! このところ、最も繰り返して聴き込んでいるのはこの1枚だ。
まとまったオリジナル録音が聴けるのは、2003年のセカンド・アルバム『One Step Forward(ワン・ステップ・フォーワード)』以来となるレ・ヌビアンズ。つまり、この12年間では、それとデビュー作、98年の『Princesses Nubiennes(プランセス・ニュビエンヌ)』の2枚しかオリジナル・アルバムをリリースしていない。プラス、2005年に“ヌビアンズと仲間たち”による充実のスラム・アルバム『Les Nubians presents : Echos / Chapter One : "Nubian Voyager"』をリリースしているので、ファンはその3枚を繰り返し聴きながら、新しい録音を待ち続けてきた。

現在はニュー・ヨーク:ブルックリンをベイスにしている、カメルーン/フランス・オリジンのシンガー/スラマー、エレヌ&セリア(LN&C-Lia)のフォサール姉妹による《レ・ヌビアンズ》の音楽、活動、発言には、ドイツの植民地を経てヴェルサイユ条約によってイギリス・フランス両国の分割信託統治領となったカメルーンという国に特有のコスモポリットな感覚が常に、それも色濃く、にじみ出ている。想像するに、彼女たちはその感覚を、(ポジティヴな側面からだけではなく、西欧列強の植民地政策に翻弄され続けた母親の祖国の歴史の悲哀にも想いを馳せた“アンビヴァレント”な感情を込めて)英語の名詞に仏語の複数定冠詞をつけるという変則的なユニット名で表現したのだと思う。

(当時日本のレコード会社はおそらくその点に留意せず、彼女たちがフランス出身だという理由から単純にユニット名をフランス語式で――つまり名詞複数形の語末の"s"を発音しないのが正しいと判断して――〈レ・ヌビアン〉とカナ表記してしまったのだろう。もし、彼女たちがフランス語でユニット名をつけるなら〈nubien(ヌビアの(人))〉の女性複数形で〈Les Nubiennes=レ・ニュビエンヌ〉)という表記にならないとおかしい――ファースト・アルバムの表題のように)

彼女たちの〈アフロピアン〉・ミュージックは、1作目『プランセス・ニュビエンヌ』から現在に至るまで、そのメッセージの直裁性にはもとより、あらゆる汎アフリカ的な音の感触(R&B、ヒップホップ、レゲエ、ジャズ、アフロビート、ブラジリアンビートetc.)にも、客演ミュージシャンのキャラ/バックボーンにも、使用楽器(音色)にも、含みに富む言葉の隠喩法にも、一貫したポリシーと強い美しさが弾けていて、聴き飽きるということがない。繊細な音作り、(マキシ・シングルでの)大胆な(リ)ミックス・ワークまで含め、音楽の実質が重層的で聴き痩せしないのだ。

それでも、そろそろ新しい音が聴きたいと思っていたところに、昨秋リリースされたのがこの『Nü Revolution(EP)』で、これは既に完成している待望のニュー・アルバム(とうとう!)の前段としてリリースされたものだ。おそらくフル・レングス・アルバムもタイトルは『Nü Revolution』になるはず。このEPはヌビアンズのライヴ会場かウェブサイトでしか買えないし、数量限定だが、ということは、EPの大部分は“フル・アルバム”にも収録されるはずだ(が、これでしか聴けない曲もあるだろうし、再収録される曲もミックスをちょっと変えてきたりするんじゃないかな。なので熱心なファンはEPも買ってみる価値があると思う。……アルバムも同ミックスだったらごめん)。

内容は、上述の美点はそのままに、よりソウルフルでダンサブルでグルーヴィーな勢いのある曲が並んでいる。この音の豊満なエナジーには”オバマ・レヴォリューション”の高揚が作用していることは間違いないだろうが、現在のエジプト革命の様子をテレヴィやネットで観ながら聴いていると、オレの耳にはよりしっくりくるし、気分がグンと盛り上がる(ヌビアはエジプト南部からスーダンへかけてのナイル川流域の地域のことだし、エジプトも昔のヌビア王国も同一祖先から分派した国)。まさに“A-free-can groove”な感じに、胸のすくような気持ちよさがあるのだ。

で、“フル・レングス”のリリースは4月で、日本盤も出るという話だ(そのあかつきには、カタカナに〈ズ〉をつけてくださいね)。

オフィシャル・ウェブサイトからは、EPの中の1曲「Liberté(リベルテ/自由)」がフリー・ダウンロードできる。


10.26.2010

またまたショックです

■3ヶ月前のシュガー・マイノットに続き、“The Cool Ruler” グレゴリー・アイザックスまで逝ってしまった。昨年ガンの告知を受けて闘病していたが、25日の朝、ロンドンの自宅で他界したとのこと。
享年59歳。


画像は『ガーディアン』紙の第一報だが、同紙はこの速報に続き、完全な追悼記事をこれからアップするという。同紙の報道の細やかさにも頭が下がるが、そもそも、こうした2段階報道の扱いにふさわしい大スターだったのである。

ボブ・マーリーの相棒は、バニー・ウェイラーが健在(今年もヨーロッパ・ツアーを行なった)だが、ピーター・トッシュは20年以上前に殺された。

その“レゲエの神様”マーリーたちの背中を見てきた次世代の五天王と言われたスター集団が、“皇太子”デニス・ブラウンに、この“クールな統治者” グレゴリー・アイザックス、シュガー・マイノット、フレディー・マグレガーにジョニー・オズボーンだ。このうち最初の3人がいなくなってしまったことになる。

ジョゼフ・ヒル(カルチャー)もジャスティン・ハインズも、アルトン・エリスもラッキー・デューベもいなくなった。好きな人がどんどんいなくなる。



10.21.2010

最新プレイリスト

■このくらい秋深まって空気の温度が下がってくると、音楽がザクッと空気を裂いて心に突き刺さってくる気がする。夜、ウィスキーを飲みながら音楽を聴いていると、確実に真夏よりも音楽をちゃんと聴き取れているのが分かる。

個人的に最近繰り返し聴いているCDの、ベスト10プレイリスト。



Duke Ellington, Charlie Mingus, Max Roach / Money Jungle (Blue Note)
Tu Shung Peng / Around Tu Shung Peng (Makafresh)
Orchestre National de Barbès / Rendez-vous Barbès (Association Soudani)
SMOD / SMOD (Radio Bemba/Because/P-VINE)
Terry the Aki-06 / T-Muzik vol. 1&2 (Tokuma Japan)
Tiken Jah Fakoly/ African Revolution (Barclay)
DeepThroat X / XXX (***)
John Legend & the Roots / Wake Up! (Columbia)
Sly Johnson / 74 (Universal France)
Seu Jorge & Almaz / Seu Jorge & Almaz  (Cafuné)

エリントンは1962年、トゥ・シュン・ペンは2008年のファースト。あとはすべて今年の新譜。
LPだと、ここ3週間、セロニアス・モンクとマリア・ベターニアしか聴いてないかも。


9.21.2010

Sly Johnson


■このブログでは、クソったれな話題が続いている。少し気分転換しなくては。

そこでフランスのソウル・シンガー:スライ・ジョンソン「I'm calling you」。〈Syl Johnson(シル・ジョンソン)〉じゃないよ。シル・ジョンソンはもちろんオレも好きだが、このスライ・ジョンソンがまた、強烈にいい。

彼はヒップホップ・グループ〈Saïan Supa Crew(サイアン・スーパー・クルー)〉のメンバーで、そこでの名前は〈Sly the Mic Buddha(スライ・ザ・ミック・ブッダ)〉だった男。

サイアンでも美声を聴かせていたが、満を持して昨日、9月20日、ソロ・アルバム・デビューした。アルバム・タイトルは『74(スワソント・キャトーズ)』。オーティス・レディングのレパートリー「Fa-Fa-Fa-Fa-Fa-Fa (Sad Song)」なんかも歌ってるけど、全く曲負けしてない。この男のヴォーカルは、子供騙しじゃない。

で、そこからのファースト・カットが「I'm calling you」。日本でもまあまあ知られている、ジプシー/ナイジェリア・オリジン、英語で歌うフランス在住ドイツ人歌手〈Ayo(アヨ)〉をフィーチャーしている。

これからひと月の間、ビッグ・ネイムの注目の新譜がいっぱい出てくるけど、本ブログではスライ・ジョンソンを強力に推薦しておきます。



もっと観たい人へ、メイキング映像。

9.11.2010

Chim Cherie

■(今日のエントリーは、レゲエ・ファン、あるいはレゲエの何が面白いのか分かんないけど興味はある、という人のみ、お読み下さい。それ以外の方はおそらく頭痛がします・・・連日3けたの数のアクセスを下さる、マヌ・チャオのファンの方は読んで下さった方がいいでしょう)

先日《過ぎ去ったもの、と、たまったもの》という題名のエントリーで、イギリスのプレッシャー・サウンズからリリースされ、ぼくが解説原稿を寄せたリー・ペリーのレア・ダブ・プレイト集『サウンド・システム・スクラッチ』について触れた。


日本での発売元のビート・レコーズのウェブ・サイトでその解説が読めるのだが、その中の収録曲(6曲目)The Upsetters名義の「Chim Cherie」について、先日、友人の石川貴教くんから電話をもらった。

ぼくはその解説で以下のように書いていた:

06. Chim Cherie - The Upsetters

ミステリアスなトラックだ。ペリーが最初にリズム・ボックスを使用したのは、おそらく『Roast Fish, Collie Weed & Corn Bread』の「Soul Fire」ではないかと思う。仮にそれが正確ではないにしても、その(1978年)頃のことだろうし、このダブ冒頭のチープな打ち込みの感じは、「Soul Fire」の感触と類似している。しかしこの録音は、そのあとに明らかに音(電子音の“スネア”)が被せられており、それがペリーによるものかどうかには疑問を抱くし、仮にペリーによるものだとしてもブラック・アーク期の(70年代の)音色ではない。その一方で、それ以外の部分の音は、感触からして間違いなくアーク産であろうし、このベース・ラインにも聴き覚えがある気がするのだが、何度も聴き返しているうちにそんな錯覚を覚えているだけかもしれない……。

石川くんは、この「Chim Cherie」を聴いてすぐに、これがシャインヘッド「Billie Jean」の元だと気がついたという。聴いてみれば、あ! なるほどそうだ。しかしシャインヘッドのこの曲を相当長い間耳にしていないオレは、もっと別の曲でこの曲のベース・ラインもしくはコード進行を記憶していたはずだ。石川くんにはその電話で、「教えてもらった情報を膨らませて「Chim Cherie」に関する正しい情報をこのブログにアップするよ」と伝えたのだが、そもそもオレが何の曲でこのリディムを記憶していたのかがパッと頭に思い浮かばない。

で、ぐずぐずしているうちに、石川くんからメールでまた新たな情報をもらった。これのリディムのオリジナルはスタジオ・ワンのバンプス・オークリー「Get a Lick」だと言うのだ。ああ、そうだ、オレはこれで知ってるんだ。これ(下記 Bumps Oakley の YouTube 映像参照オレの大好きなレコードだもの。

3つ並べて聴き比べてみて欲しい。リー・ペリー『サウンド・システム・スクラッチ』からはこの曲が7インチでシングル盤がカットされたばかりなので、まずは問題の曲の7インチから、〈1.〉と表示されているA面のサンプルを。


Read full review of Chim Cherie - THE UPSETTER on Boomkat.com ©


次はこれ。もちろん、マイケル・ジャクソンのカヴァーだ。
Shinehead - Billie Jean

で、これがすべてのオリジナル。
Bumps Oakley - Get a Lick


で、これで充分に謎は解けたのだが、さらに突っ込んで調べてみると、ロック・ステディ期に生まれたこの「Get a Lick」自体が、スカ時代の末期――要するに母体のスカタライツから新バンドのソウル・ブラザーズが誕生し、しかしリズムはまだロック・ステディになっていない1967年――に、ソウル・ブラザーズが録音した「Take Ten」が下敷きになっていることをつきとめた。聴き比べると、「Take Ten」は「Get a Lick」と同じリディム、というより、前者は後者の元曲、というべき関係性にある。

The Soul Brothers - Take Ten
で、この「Take Ten」は、そもそもデイヴ・ブルーベック・カルテットの、かの有名曲「Take Five」の作曲者、兼アルト・サックス奏者のポール・デズモンドが、同曲の続編として作った曲で、このソウル・ブラザーズ版はそのスカ・カヴァーである。ならばポール・デズモンドのレコードを引っ張り出して聴いてみたら、ソウル・ブラザーズ・ヴァージョンはオリジナルのメロディーにかなり忠実であることを再確認した。もちろん原曲の拍子(4分の5拍子に聴こえるが、テンだから、これって8分の10拍子なのかな? 曲の途中がそう?)がスカの4分の2拍子になってるわけだけども。

Paul Desmond - Take Ten
ってことは、大元はポール・デズモンドまでさかのぼる、ってことか。楽しいぜ、ジャマイカン・ミュージック。

、問題のリー・ペリー(アップセッターズ)「Chim Cherie」に立ち戻ろう。
上に貼りつけた、「Chim Cherie」のシングルを試聴できるサイトはマンチェスターの相当ナイスなレコード屋《ブームカット》のものだが、そこにあるこの曲の解説には、これが〈Billie Jean〉オケの元であることもきっちり書いてあるだけでなく、ジャマイカにドラム・マシーンが導入された最初期のものであり、ここで聴ける打ち込みのプログラミングは、アップセッターズ、のちに(ボブ・マーリー&)ウェイラーズのリズム隊になったアストン&ファミリーマンのバレット兄弟によるもので、それをリー・ペリーの作ったブラック・アーク産〈Billie Jean〉オケ――つまり、もっと正確には〈Get a Lick〉オケ――に被せたもの、と書いてあるのだ。バレット兄弟がいつこのプログラミングを行なったかは記されていないが、仮にブラック・アーク・スタジオが存在した70年代の後半だとしても、そのビートを打ち込む作業自体はリー・ペリーの手を介していないわけだから、この「Chim Cherie」の打ち込み音の感触が、知られているブラック・アーク産の録音にはない種類のものだったのは、つまりそういうことだったのである。

なので、ぼくが解説原稿に書いたことは半分は当たっていたわけだ。「Billie Jean」が頭に浮かばなかったのは、レゲエ評論家としては結構なミスだが。

で、こうした曲とリディムの関係がクリアーになってくれば、派生した曲の関連性はどんどん見えてくるもので、なんてこったい、ハーフ・パイントのこの名曲も同じリディムだったね。

Half Pint - One in a Million
さらに冷静になって考えてみると、リー・ペリー自身も1990年のマンゴ盤『From the Secret Laboratory』の中の「You Thought I Was Dead」でこのリディムで歌ってるじゃん。

バックはダブ・シンジケイト名義だが、実質のリズム隊はルーツ・ラディクスなのでドラムズはスタイル・スコット。石川くんから聞いたところでは、例のシャインヘッドの「Billie Jean」も、あのドラム(打ち込みっぽくシンセ・ドラムを叩いてるのか?)はスタイル・スコットだということだ(シャインヘッドのレコード、オレ、持ってないのよ……)。

Lee Perry & Dub Syndicate - You Thought I Was Dead
http://www.youtube.com/watch?v=NtWPj0Ce0rI


ってことで、長くなったのでこのへんで止めますが、『サウンド・システム・スクラッチ』を買われた方は、是非、この追加情報も参考にしてください。

石川貴教くんは、レゲエ・ファンにはおなじみですが、ぼくの20年来の友人でもあります。ジャマイカに暮らしていたこともあり、レゲエもぼくよりずっと詳しい(つーか、あらゆるジャンルの音楽について深い知識を持っている)。ギヴ・サンクス!