■ルーツ・レゲエのバンドの中で一番好きなバンドが《Misty in Roots》だ。1975年にロンドンで結成された、UKのホームグロウン・レゲエ・バンド。
1979年のデビュー・アルバム『Live at the Counter Eurovision』(ベルギー/ブリュッセルのライヴ)は、今もってレゲエのライヴ盤の最高峰に君臨し続けている。
70年代イギリスでの、極右政党の台頭、移民排斥運動の盛り上がりに対抗するべく、黒人のレゲエ・ミュージシャンと白人パンクスが共闘した《ロック・アゲインスト・レイシズム》ムーヴメント(つまりエリック・クラプトンのレイシスト発言がみんなに叩かれた例のあれ)の代表的なグループでもある。
あと2年で結成40周年という超ヴェテラン・バンドだが、これまでにフル・アルバムは6枚しか出しておらず、うち2枚がライヴ盤(2枚とも内容最高で、入手は相当に困難)、それどころか、1989年を最後に、この25年近く1枚も録音していない。
70年代イギリスでの、極右政党の台頭、移民排斥運動の盛り上がりに対抗するべく、黒人のレゲエ・ミュージシャンと白人パンクスが共闘した《ロック・アゲインスト・レイシズム》ムーヴメント(つまりエリック・クラプトンのレイシスト発言がみんなに叩かれた例のあれ)の代表的なグループでもある。
90年代以降はライヴも滅多にやらなくなってしまい、この10年ほどは、気が向いたらイギリス国内で年に数回のギグをやったり、ヨーロッパのフェスにチョロっと出る程度。しかし、その合計回数が1ケタ、という年もザラだ。
とにかくレコーディングはしない、ライヴもやらない、オリジナル・アルバムは全部廃盤のまま再発もしない、という、つまりほとんど何もしないこと、その商売気のなさ、やる気のなさが、渋く黒光りする《MIsty in Roots》伝説の肥やしとなり、そのバンド名を輝かせ続けてきたという、つまり端的に言って、恐ろしくカッコいいバンドである。こんなバンドはなかなかない。
ぼくは2002年に彼らが15年振り(くらいだったはず)にパリ公演をやるというのを聞き、矢も盾もたまらずパリへ飛んだ。そのときもミスティーはせっかくフランスまで来たのに、パリ公演たった1回しか演らなかった。由緒ある最高のホール《エリゼ・モンマルトル》(キャパ1200)を満員にし、それでおしまい。
演奏は素晴らしかった(微妙に与太っててザラッと粗めだった)し、ちゃんと昔と同じ音を出してることを確認できただけで鳥肌が立った。チケットもこの21世紀に2500円程度、前座もなし。こんにちは、も、ひさしぶり、も、さようなら、も、何もなかったし、淡々と1時間半くらい演り続けて帰っていった。その最中、メンバーはニコリともしなかった。レゲエマンは往々にしてラヴ&ピースの表現法を間違えてすぐお客さんに媚びるものだが、ミスティー・イン・ルーツは全く違った。(かっけー!)
で、久しぶりのパリ公演のお誘いのメイルがきた! 5月3日だという・・・
ああ、時間はあるけど・・・
今回の会場《ニュー・モーニング》は、81年にアート・ブレイキーやチェット・ベイカーがこけらを落として以来あらゆるジャズ・グレイツが出演してきた、パリ10区〈小さな馬小屋通り〉にあるジャズ・クラブだ。最高だね。ここはキャパが500しかない。
世界中のジャズ・マニアあこがれの名クラブだが、とはいえ店名はボブ・ディランの『新しい夜明け』から取ってるし、レゲエやブルーズ、ソウルなんかのブッキングも多い。
ぼくもここでギル・スコット=ヘロンとかテリー・キャリアーとか観たし(二人とも、もうこの世にいない…)、レゲエならミスティック・リヴェレイション・オヴ・ラスタファーライとか、アイジャーマン&ホースマウスとか、パブロ・モーゼズとか、リコ・ロドリゲス&ジャズ・ジャマイカとかウィンストン・ジャレットとか、とにかくレアなものをいろいろ観た・・・
こんな絶好の機会にMIRを観に行けないほど経済的に余裕が無いんだからヤんなるよ。調べたら、チケット代は10年前よりは流石に高くなってる。26ユーロ。3千円超えだ(笑)。
これは2004年、ミュンヘン近郊の湖ヒームゼーのレゲエ・フェスに出演したときの映像だけど(ドイツ人は湖さえあると、夏休みにその脇でレゲエ・フェスを開きたくなるクセがあるので、こういうフェスが各地にある)、オレが観たのはこの2年前だから、バンドの雰囲気はちょうどこんな感じだった。