11.17.2010

マニュ・チャオ通信(#24)話題3題

■今日のマヌ・チャオ通信は、話題が3つ。

その1・・・5日ほど前、西サハラ問題に関してマヌ・チャオが声明文を出した。


西サハラはサハラ=アラブ民主共和国として76年に独立を宣言したものの、今もってモロッコが武力をもって領有支配している。首都エル・アアイウンと近郊のキャンプでは、先日からモロッコ軍がサハラウィ(=独立派市民)の運動を野蛮な暴力で鎮圧しようとし、死者や行方不明者が多数出ている。

マヌはEU諸国や世界の国々に対し、モロッコ政府に暴挙を止めるべく説得することを、そして現地で何が起きているのかを正しく世界に伝えるために、各国のジャーナリストが現地に自由に入れるよう、モロッコ政府に働きかけることを求めている。国連には、世界人権宣言の第二条(↓)が適用されるべく、しかるべき処置を取ることを、また、フランス政府とスペイン政府に対しては、サハラウィを殺し、虐待し、抑圧することに使われている武器をモロッコ政府に売ることを直ちに止めるよう、訴えている。

(世界人権宣言 第二条)すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる自由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基ずく(原文ママ)いかなる差別もしてはならない。

なお、このサハラ=アラブ民主共和国を日本は承認していない。



その2・・・先日11月8日にフランスでリリクソンの待望の新譜がリリースされた。これが強烈に素晴らしい! チャオ・マニアには知られたことだが、西アフリカはギニア生まれでパリ在住のレゲエ・シングジェイであるリリクソンは、マヌ・チャオ2002年のライヴCD『Radio Bemba Sound System』とDVD『Babylonia en guagua』で聴くことのできる、当時のラジオ・ベンバ構成員だった、あのレゲエMCだ。


シリアスなマヌ・ファンで、まさかあのDVDを観たことのない人はいないと思うが、そこまでのファンじゃない、という人のために、そのハイライトのひとつ、「Mr. Bobby」のYouTubeのリンクを。


ちなみに、「Mr. Bobby」はもちろんボブ・マーリーのことだし、そもそもこのDVDのタイトル『Babylonia en guagua』だって、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのライヴ盤『Babylon By Bus(バビロンをバスで行く)』の表題をまんまスペイン語にしたものだ。そのマーリーの『Babylon By Bus』は(その大半が)78年〈Kaya〉ツアーのパリ・ライヴの実況だったわけだけど、マニュの『Babylonia en guagua』も同じパリ・ライヴだったわけで、つまり自分もマーリーと同じくパリのライヴ録音をリリースする際に、その映像の方にマーリーのライヴ・アルバムと同じタイトルをスペイン語でつけたわけで、それくらいマニュはマーリーに心酔してるってことだろうし・・・きっと、当時17歳のマニュ青年はパリでBMWのその公演を直接観てビビッときたんじゃないだろうか・・・と、想像するに、なかなかいい話である。

だから、なおのことその『Babylonia en guagua』のショウ(ツアー)では、演奏のレゲエ度をバッチリ高めたかったのではないか? で、そのためにフィーチャーするラスタMCとして抜擢されたのがビジー(Bidji)だったわけで、それが Lyricson の別名だ。彼はラジオ・ベンバに加わる前年の91年にも、フランスのヒップホップ・グループの第一世代の筆頭にある名グループ Assassin(アササン)のアルバム『Touche d'Espoir』とそのツアーに参加していた。それを聴いたか観たかして、マニュは彼に声をかけたのかもしれない・・・それくらい、アササンでのリリクソンの活躍は光っていたのだが、御存知のとおり、『RBSS』/『Babylonia en guagua』でも彼の存在感は強烈で、その起用は大成功だったから、あれを観て〈Bidji〉の音源を探した人もいたかもね。でもその名義では彼の作品は見つからない。ソロでのシングルやアルバム(これが3作目)はすべて〈Lyricson〉の名前で出しているからだ。


で、このアルバム『Messages』が最高なのだ。オケのプロダクションは、パリ、ロンドン、キングストン(ファイアーハウス・クルー)。歌詞は全曲英語(というのが、彼のソロ・ワークでの常)。あのハイ・トーン・ヴォイスで縦横無尽にトラックを駆け回る歌とトースティングには円熟味が出てきたし、オケも素晴らしい。オレなら今年のレゲエ・アルバムのベスト5に入れたいところだが・・・そのためには『ミュージック・マガジン』の年間レゲエ・ベスト・アルバム選考合議のお相手である大石始さんにも、即、聴いてもらわないといけない。合議は今月の末に持たれるのだ。・・・ああ、もうそんな季節か。・・・そういえば、大石さんが書いたマヌ・チャオのリキッドルーム公演のレポートはここで読めるし、彼がとったインタヴュー記事は『CDジャーナル』11月号で読めます。

リリクソン myspace


その3・・・で、ぼくのとったインタヴューは、『ミュージック・マガジン』の12月号に6700字くらいの分量で載ります。発売は20日だけど、その日は土曜なんで、今週金曜には書店に並ぶんじゃないでしょうか。(HMV、仕事速いな。表紙はコーネリアスか)