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『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』、いよいよ、です。
といって、まだ最後の校正中なのですが。発売を公表してから優に半年以上、これまでいろいろな方々にお問い合わせなどいただき、興味を持っていただいたのに、遅くなってしまいごめんなさい。
この遅れは、(以前も書きましたが)一時期、パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター著
『ジャズ・ミュージシャン 3つの願い』の作業を優先させたことにもよるのですが、そちらも50~60年代のジャズのファンの間では、原書のフランス版が出てからのこの3年(その後英語版とドイツ語版が出たこともあって)とても注目されていたいわば“幻の1冊(その意味は〈序文〉で分かります)”で、これまで誰も見たことのなかった写真と、誰も聞いたことのなかった言葉が詰まった本です。こちらが結局先に出る運びになったので、情報は既に公になっています。
どちらも自分で原書を買って読んで面白いと思い、それで日本語版を出したいと思ったものです。つまり全然外国からの売り込みでもなければ、雇われ翻訳者の仕事をしたわけでもありません。個人的にジャズ好きとして読んで、どちらも日本で出す価値があると思ったわけですから、手に取っていただけたら、ぼくと同じようにこの2冊の本を面白いと感じてくださる方が大勢いると思います。
ま、ボリス・ヴィアンの方はジャズの原稿だけではなくて、それ以外のレコードのライナー・ノーツやギャグまみれの原稿もいろいろと入っていますが、それでも『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』なのです。ボリス・ヴィアンの生き方自体がジャズなのですから、ジャズな人がシャンソンの原稿を書いても、そのテクストは“ジャズ”なのです。ヴィアンのファンの方は、それで総てを理解されることと思います。
《2つのことがあるだけだ:あらゆる流儀で楽しむ、しゃれた女の子たちとの恋、そしてニュー・オーリンズかデューク・エリントンの音楽。それ以外は消えてなくなるべきだろうな。それ以外は醜いんだから》
—— ボリス・ヴィアン『日々のあぶく』(a.k.a.『うたかたの日々』『日々の泡』)
ヴィアンのあまりに有名な一節ですが(これはオレ訳ですが)、もちろんヴィアンはマイルズ・デイヴィスやジョン・コルトレインが、マヘリア・ジャクソンやビリー・ホリデイが醜いなどとは思っていない。どころか、大好きなわけです。彼のこういう“もの言い”が彼の“ジャズ”だし、彼の“ジャズ”が好きな人は、彼が何を書こうとそのテクストに“ジャズ”を聴くわけです。だから、『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』には何が書いてあってもいい。“ボリス・ヴィアンのジャズ”の入門書でもあるわけですから。・・・その多くはほんとにジャズのレコードのライナー・ノーツですけどね。そういう本です。
とはいえ、『ジャズ・ミュージシャン 3つの願い』に載っている300人のミュージシャンの“願いごと”で、ぼくが一番好きなのはデューク・エリントン(上のリンク先にはそれが掲載されていますが)。彼のカッコよさとエレガントさは、やっぱり最高なんですよ。