5.20.2009

ボリス・ヴィアンのジャズ入門(その1)

『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』という邦題になりましたが、原題は『Derrière la zizique』といいます。“おんがくの裏側に”といった意味で、要はヴィアンがレコードの裏ジャケットに書いた文章(ライナー・ノーツ)を指しているわけなんです(“ジジック”というのは、“ミュージック”の、言わば大人も使う幼児語)。もはや“裏ジャケ”なんて言葉は死語だし、ダウンロードでしか音楽を買わない人には“ライナー・ノーツ”なんていう言葉も???だろうし、そんな、CDどころかDL世代の若者にも“引かれたくない”(つまり、面白く読んでもらえる本な)ので、そういう邦題にしました。


とはいうものの、中身はジャズばっかりじゃないのです。ヴィアンはシャンソンやフランスのポップ・ミュージックのレコードにも、それからジャック・タティ『ぼくの伯父さん』、ルイ・マル『死刑台のエレベーター』(の音は、マイルズ・デイヴィスのジャズだけど)ほか、複数の映画のサントラ盤にも原稿を書いていました。それらも含め、彼がレコードの裏側に書いた総ての原稿をまとめた本です。“Rock'n'Roll”や“R&B”についてのコラムもあります。それに、彼にしか書けないようなシニカルな爆笑原稿も何本も入っています。


その日本語版『ボリス・ヴィアンのジャズ入門』は、表紙がまだできていません。下の写真は(左)がファヤール社から出ている『全集』の第12巻で、翻訳の底本。(右)はぼくが最初に買って読んだペイパーバック版。で、これは面白いぜ!と思って訳することに決めたのです。日本では早川書房からボリス・ヴィアン全集が出ていますが、この“ライナー・ノーツ集”は本邦初訳出です。