カエターノ・ヴェローゾ/オホス・デ・ブルッホ
大西ユカリ/アラン・トゥーサン
■昨日、約3週間ぶりにタワーレコードヘ行った。新宿店でも、月曜の午後なんかは、試聴機が自分のもののように使える。4時間近く各階をうろちょろして、買おうと思っていた新譜をチェックした。期待していたハレドとザップ・ママは、結局買わなかった。どっちも20分以上聴いてよく考えたけれど、非富裕層のオレには避けるべき散財になる可能性が高い(それほど聴き返さないだろう)と判断した。25年もレコードやCDを買い続けていると、おのずと自分の購入基準がいろいろとできてくるが、中でも最初に考えるのは《通して5回、聴き返すかどうか》だ。今回のハレドとザップ・ママとは、3回デートして別れてしまうようなイメージを持った。ふるのではなく、オレがふられるのだ。ふられた相手と自分の部屋でしばしば目が合うのは、できればもう終わりにしたい。もう既に何百人もいて後悔の念に苛まれている。
イギー・ポップは(もう)試聴機に入っていなかったので、昨日一番迷った末に、これも奥歯を噛んでやめにした。
それから、オレはLPフォーマットの時代に作られた作品は、基本的に探してLPで買う主義である(高価な盤は例外だが)。盤質がそれほどひどくないなら、たいていはLPの方が音がいいし、第一、アーティストはどこでA面を終わらせるか、何をB面の頭にするか何日も悩んだだろうし、ジャケットのデザイナーは 30cm四方の中で表現したのだし、それらを含めて作品だからだ。ということでなるべくなら80年代以前の音楽をCDでは買いたくないのだが、それでも古い音源をディジタル・リマスターしたもので聴きたいものは山ほどあるので、タワーレコードに新譜を買いに行っても、毎回何か古い音楽も1枚は買ってくる。で、昨日は長らく欲しくて買わずにいたハンク・ウィリアムズ42曲入り名曲集を買った。こういう死ぬまで聴き返すことが分かっている間違いのない買いものは、買う瞬間のスリルには欠けるが、それとは別種の、質のいい静かな興奮がある。
好きな本屋であるジュンク堂の新宿店でも何冊か本を買ったが、一番の目当ては高山なおみの新刊『チクタク食卓(上)』だった。テレヴィの料理番組でも、司会者が試食する前に、作った自分が味見して思いっきり「おいしい!」と言うのがたまらなくかわいい人だ。そんな人が自宅で作って食べてるものを自分で記録した本なので、かわいい本でないはずがない。装丁も紙質もページの作りも彼女らしく、こういう買い物も、とても気分がいい。
上機嫌で家に帰ってきたら、次号の『ミュージック・マガジン』のクロス・レヴューの依頼メイルが来ていて、そのネタ7枚の中にイギー・ポップが入っていた。