1.14.2011

ボガートだぜ、頼むよ


■今日1月14日は何の日かというと、ハンフリー・ボガートの命日である。毎年1月になるとボギーのことを思い出す。オレにとって、ボガートは大事だ。だから命日まで覚えている、というわけでもなくて、おふくろの誕生日の翌日だからたまたま覚えているだけなのだが。

それから、毎年〈浦安市では、ディズニーランドで成人式〉的なテレヴィ・ニューズを見ると、その瞬間にも必ずハンフリー・ボガートを思い出す。当時も半分ジョークだったからこういうところに書くことも恥ずかしくはないのだが、オレは自分の成人式の日に吉祥寺の小さな映画館《ジャブ50》で『カサブランカ』を観ていたのだ。区から成人式の招待状が来たけれど、もう当時からそういうお役所仕事は綺麗に無視することにしていたので(それだけじゃなくて、シューカツとか、そういう、みんなゾロゾロ揃ってやるようなことは全部敬遠することに決めたので)、成人式にプレゼントもらいには行かず、自分だけの成人式をやろうかなと思ってたまたま情報誌を見たら《ジャブ50》で『カサブランカ』をやってたので、そのとき既に2~3回は観た映画だったけど、大人の手本、ということでボギーの姿を拝みに行って、帰りにどっかの安いバーに入って一人でウィスキーを飲んで帰ってきたという、そういう正しい成人式を執り行ったので立派な大人になることができた。

で、今年の1月14日は、またまた絶妙なタイミングでボギー・デイになった。少し前にAmazon.co.jpでボギーのDVD3枚セットを見つけて驚き、品切れ中だったけど注文しておいたやつが、ちょうど命日の今日、届いたのだ。

何に驚くって、この値段である。たまたま最近イルコモンズさんがフランク・キャプラの『我が家の楽園』について書いていて、“追記”でそのDVDが廉価(¥500)で買えると書き添えているが、まさにこのボギー3本組もそれと同じシリーズ。しかしこっちは名作3本揃って税込¥999なのだ。オレの成人式は¥333で済み、命日分は¥666で感じ入ることができる。どれも何度も観た映画だけど、手元に持っていたいものだったし――むしろハワード・ホークス監督の『三つ数えろ』と、ジョン・ヒューストン監督の『マルタの鷹』の2大ハードボイルド名作の方が『カサブランカ』より好きなんだけど――、それにしてもこの3枚組が¥999っていうのは、ある意味いい時代なんだと思わざるを得ない。

といってもひとつ文句あるのは、このDVD出してる板橋のファーストトレーディングって会社、全然ボギーにリスペクトないのね。3本ともクレジットが〈ボガード〉に濁ってるんだよ。ああ、なさけねえ……オレの大人の手本が……。こういうヤツらに限って、〈bag〉を〈バック〉って言うんだぜ。

ボギーのハードボイルドからジャン=リュック・ゴダール『勝手にしやがれ』(世界で初めてボギーへのオマージュを表明したフィルム)に(それも20歳頃に)行き着いたオレは、その少しあとで『ボギー! 俺も男だ』にも流れ着いて(笑)ウッディー・アレン好きになるわけで……と、思い出して調べてみたら、これだけ日本でDVD出てないじゃん。あと30年くらい生きると、これも500円で買えたりするのかな。