1.20.2011

ユロ氏、パイプを返してもらう

『ル・モンド』紙(01月19日付)

■一昨年、フランスではジャック・タティ(タチ)回顧展覧会のポスターが“検閲”された事件があった。ムッシュ・ユロのトレイド・マークでもあるパイプがアルコールと煙草に関する法律〈エヴァン法〉に抵触するものとして、そのエキシビションのポスター上ではアホくさい風車に置き換えられてしまったのだ。


煙草の広告を規制するだけでなく、こうした過去の偉人の肖像が改めて公に使用される際にもその写真から煙草やパイプを取り上げるというのはいかにもやり過ぎで下らないし、フランスでは同じ法律によってこれまでにも、セルジュ・ゲンズブールからも、ココ・シャネルからも、ジャン=ポール・サルトルからも、アンドレ・マルローからも煙草を横取りして揉み消してしまったのだから、もうこうなると“文化の冒涜”である。

ということで、フランスの国会では、そういうのはやっぱりいかにもやり過ぎでした、という話になり、めでたく昨日の19日、法律の紋切り型の適用は改め、守るべき“文化遺産”は守ろう、ということに、あいなったようだ。

『ぼくの伯父さんの休暇(Les Vacances de Monsieur Hulot)』(1953年)

たまたま先日ハンフリー・ボガートのことを書いたばっかりだったが、彼が巻き煙草を親指と人差し指で(“ボギー・スタイル”で)はさんでいる写真の煙草を……たとえばチュッパチャップスに差し替えたりしたら、それはもう、天地がひっくり返ってしまう。