1.27.2011

闘う女性誌


■ドイツのポピュラーな女性週刊誌Brigitteが、プロのファッション・モデルを一切使わなくなってから1年経った。一般的なドイツの女性に向けた雑誌なんだから、モデルも“一般人”であるべき、として、2010年の新年号から同誌はそういうイニシアティヴをとったのだ。

編集長曰く、プロのモデルは“一般女性”よりも平均して23%も体重が軽く、モデル業界全体が拒食症。痩せた女の子の太ももやデコルテを、服が似合うように〈Photoshop〉でふっくらとレタッチしてウソ写真を作るのに、もうウンザリしたのだ、と。

ドイツのモデル業界は『ブリジット』誌の方針に対して反発し、“女たちはお金を払って普通の女たちの写真を見たいだろうか?” “それは単なる話題作りにしかならず、長続きするはずがない” “アマチュアを使って経費削減しようというのだろう”――というような否定的な意見を述べていた。

確かにプロのモデルの“美しさ”からすると明らかに見劣りする素人モデルばかりが登場するらしいのだが、しかし『ブリジット』誌は、彼女たちへのギャラとして、プロのモデルのエイジェントへ払う金額と同じだけを支払っているという。そして、同誌は“読者モデル・オンリー”の誌面作りにしてからのこの1年間で4%販売部数を伸ばし、現在68万部以上を発行する、依然としてドイツで最も売れる雑誌の中のひとつであり続けている。

(この1年間に採用された読者モデルたち。ひとりひとりを拡大して見ることができる)

そして同誌は〈読モオンリー1周年記念〉の今月12日号で、また新たな挑戦を行なった。

今年2011年の着るもののトレンドを紹介する特集に登場する20数人のモデルを、全員移民系にしたのだ。62歳のトルコ系女性に始まり、ベルリン在住の3人のトルコ系学生、バハマ出身の33歳学生(心理学)、イラン出身の音楽家27歳、ネイル・サロン勤務ヴィエトナム系30歳、トルコ系木工職人30歳、同トルコ系ダンス教師と彼女の娘、乗馬愛好家のスウェーデン人2名……etc.


昨年、『身の破滅へと急ぐドイツ』というような意味のタイトルの本を出版し、その中で、イスラム移民の流入とトルコ系住民の高い出生率のせいでドイツが滅びていくという持論を展開、その後にも人種差別発言をしてドイツ中央銀行理事を解任されたティロ・ザラツィン(Thilo Sarrazin)が国民の間で高い人気を誇っており、その著書がもしかすると戦後ドイツの書籍売り上げNo.1になるかもしれない、というくらいの勢いで売れているその国においての、この『ブリジット』誌の考え、やり方には、どう見ても明らかに政治的な意図があるだろう。

とにかくモデルはプロからアマへ、さらに移民を、というポリシーの女性誌が70万も売れてるというのは注目に値するね。