■この宣伝写真と実物のビッグマックがどのくらい違うかを問題視する人は少ない(おそらく。・・・多かったら、こんな写真を使い続けられるはずがない)。そのことより、世の関心事は、今ビッグマックが200円で買えることらしい。ましてや、新自由主義経済の仕組みとデフレイションについて考えながらこいつを食らう人は多くないだろうし、特にパレスチナ問題に思いを馳せて食ってる人なんかはもっと少ないだろうけれど、それはまた別の話だ(ところで、村上春樹の例の“壁と卵”スピーチに感銘を受けた人は、まだマクドナルドを食ってるんだろうか?)。
最近、フランスとドイツの興味深いウェブ・サイトを知った。
例えばフランスのこのサイトでは、広告やパッケージの写真と実物とを比較して、メイカー/企業にプレッシャーをかけている。同サイトを見ている人たちは、自分の買ったものの“実態”がひどかったら、食べる前に写真に撮ってここに投稿するのだ。中には雑誌の表紙モデルの"before & after photoshop" まで匿名投稿されたりするんだけど。
モデルのウエストに“くびれ加工”がなされたり、太ももがシャープになったって誰もスキャンダル視しないし、某国大統領のわき腹のラインが直線加工されたって、こっちには格別実害はないが、実際にお金を払って買わされる商品が宣伝(写真)と違うなら、それは大なり小なり詐欺であるはずだ。
とはいえ実際は、「なんだこれ、詐欺だろ!」と思っても、みんな面倒くさいから一瞬で憤りをおさめちゃうし、食べ物なら、食って目の前からブツが消えたら、もうどうでもよくなっちゃうし・・・それが長年積み重なった結果、まあ世の中そんなもんよ、という澱んだ不感症的空気が、メイカー側にも消費者側にも蔓延してきたんだと思う。
ところがドイツの《PUNDO 3000.com》では、『広告 VS 現実』と銘打ったプロジェクトに取り組み、消費期限内の食品を100種類集め、パッケージ写真と実際の中身を並べた比較写真集を発売して、あらためて現実を白日の下に晒した。この企画は、インチキな製品を作る側/それを買って怒らない受け手側、その双方の人間の責任感のなさ、ネガティヴな諦念、“ことなかれ主義”の存在すら自覚しないように自分を飼い馴らしていく人間の情けなさなんかを雄弁に示している気がする。
こういうの見るとオレは、〈広告 VS 現実〉の比較図の左側に、【国家権力による民主主義のプロパガンダ】の図を入れたとき、その“右側”にくるものを想像しちゃうけどね(リビアのじゃなくって、まずこの国のさ)。
こういうの見るとオレは、〈広告 VS 現実〉の比較図の左側に、【国家権力による民主主義のプロパガンダ】の図を入れたとき、その“右側”にくるものを想像しちゃうけどね(リビアのじゃなくって、まずこの国のさ)。
思うに世の中一事が万事。鈍感、面倒くさがりで、ことなかれ主義の国民/消費者なんて、声のデカい連中に丸め込まれ、ベロベロにナメられまくって生きてくことになるんだよね。たまに何かに抗議するにも暴力警察に包囲され、先進的な議会制民主主義と称して清き0.2票(!)を与えられ、洗練された国民たるもの、クールにふるまい、それで諒とするものだ、てな欺瞞に操られちゃう。そこまで不感症になりゃあ、ネオリベ・デフレ・バーガーの広告や“苦さ”に敏感になんてなっていられないわな。