■以前テレヴィで、本屋で本の中身を携帯電話のカメラで撮影する人のことを問題視する番組を見たことがある。全ページ撮るわけじゃないんだから、つーか、カシャッと1枚撮るくらいならそんな目くじら立てなくてもいいだろうに、と個人的には思う。
書店で本をめくっていると、その本の著者がある別の本を紹介していて、そっちの本が欲しくなることがよくある。先日も、本屋で見た本の中に書いてあった『なんとか』(かんとか文庫)という書名と出版社名を暗記してその本を探しに文庫のコーナーに行ったら、その本がない。そこで、書名を忘れないようにメモしようと思ったが、あいにく手帳もペンも持っていない。・・・こんなときにカメラ付き携帯電話があって、そのページの書名の情報の箇所だけ写真に撮れたらどんなに便利だろうと思った。それが“いけないこと”なら、写真を撮らなくたって携帯電話のメモ機能を使って書名と出版社名をメモすればいいんだろうけど、携帯電話という物体を所有する気持ちがないオレには、立っててもきちんとメモできるタフなモレスキンとペンを常に携行する以外ない。・・・でも、本を見て、その中の情報を手帳に書き写してんのも、いけないんでしょ、その論理だと。
はっきりいって、オレが手帳に何かを一番メモしたい場所は本屋の中だ。本を買わないで情報だけ盗む、なんて断じるのは(思うに)多くの場合浅はかな言いがかりに過ぎず、例えばオレは月に何度も本屋に行って多ければ月に10冊とか20冊とかの本を買うけど、本屋にいる時間が長ければ長いほど、上記のように〈情報元の本はいらないけど、その中で知った本が欲しいが、在庫なし〉という状況が起きるのだ。その本に載っている参考文献リストの本を片端から見てみたいときだってあるだろう。まあ、確かにその情報元の本の著者にしたら、自分の本が売れずに自分の提供した情報だけ〈盗まれる〉わけだが、そんなことにガタガタ言う著者だとしたら、そもそもそんな了見の狭い人間がいい本、作れんのかね・・・とも思うが、またそれは別の問題で・・・つーか、そもそも今日はそんな話を書くつもりじゃなかったんだ。
『ザ・ニュー・ヨーク・タイムズ』の記事でiPhone用の新しいアプリケイションの話題を読んで、すげー感心してしまった。こういうの見ると、特に冬の今頃、食器洗い洗剤でよく手がかゆくなるオレはiPhoneをちょっと欲しくなる。
環境と労働問題を研究しているバークリーのダラ・オルーク教授は、ある朝、自分の小さな娘の顔に日焼け止めのローションを塗りながら、自分がそのローションの中にどんな物質が入っているのかを知らずにいたことに気づく。研究室に行ってその内容物を調べてみると、そのローションには発ガン性物質が入っており、その物質はなんと日光に当たることで悪影響が促進される種類の物質だった。そこで、家に帰って娘の使っている他のものも調べてみると、石鹸にはジオキサン類のものやら何やらが、それから娘の“一流メイカー製の”おもちゃには、原材料に鉛が使われていた・・・。
ということで、オルーク教授は商品の安全性やメイカー企業の社会的責任に対する姿勢などの最新の情報を一般消費者間で共有するためのウェブ・サイト《GoodGuide》を2005年に立ち上げた。それまでは、例えばスーパー・マーケットで洗剤を買おうとして、その買おうとしている商品に自然と人体に悪影響を与える物質がどれだけ入っているかを調べようと思ったら、棚の前で立ちすくみ、携帯電話のインターネット・ブラウザでその商品に関する情報を自分で収集しなくてはならなかった(つまり、そんなことをする人間はまず、いなかった)。それが《GoodGuide》ができたことで、そのサイトにさえ行けば、商品について知りたい情報が随分楽に、効率よく得られるようにはなったが、いかんせん、売場で気になる商品に出くわすたびに、いちいち商品名を入力して検索する手間はなくならない。
ところが、このたび彼が制作したiPhone用のアプリをインストールすると、売場で気になる商品(食品、化粧品にスキン・ケア商品、家庭用洗剤、子供用のおもちゃ類など)のバー・コードをiPhoneのカメラでスキャニングすることで、瞬時にこんな情報が得られるのだ。
さらに、このアプリも無料で iTunes > App Store からダウンロードできる。
とはいえ、これ、まだ日本国内じゃ意味を成さないわけだが、このニュース自体は日本の消費者の強い関心を引くだろうし、同アプリの日本ヴァージョンができることも予想されるし・・・ってことで、今のうちから日本の企業も“刺激”を受け始めるんじゃないだろうか。近い将来、日本人も自分や子供の身を守るために、店内で携帯電話のカメラでパシャパシャ商品の写真を撮れるようになるだろう(実際のところスキャニングで撮影音がするのかどうか、そのへんのことは分かんないけど・・・はたから見てればスキャニングも撮影も一緒に見えるだろう)。その頃になったら、本屋で書名のメモくらい取っても許されるだろうか・・・?
ちなみに、このバークリーのダラ・オルーク教授は、1997年にナイキのヴェトナム工場がどんなスウェットショップぶりなのかを暴いた人物でもある。ちなみに、繰り返しておくが、《sweatshop》とは、爽やかな汗のかけるスポーツ用品を作ったり売ったりするメイカーのことではない。