9.06.2011

風評は悪でしょうか?

《ドイツZDF-Frontal21 福島原発事故、その後》の報道に関して、二本松農園の代表の齊藤登氏が《二本松農園ブログ》で意見を述べておられる。氏は、ドイツZDFの映像は「センセーショナルに報道するために、巧妙に編集されている」と主張している

(この反論にいきなり出てくる「今回の取材を受けたH氏」の立場と重要性が全く分からないので、ぼくが齊藤氏の主張を正しく理解できているかには若干の不安があるのだが)ここで指摘されている箇所がすべて齊藤さんのおっしゃる通りだとしても(きっとそうであろう)、それですなわち、このドイツZDFの報道のすべてがデマで無価値だという結論にはならないと考えるが・・・そこは同報道を見た人が、この齊藤さんのブログの指摘も併せてそれぞれに考えるべきものだろう。

ところで、齊藤さんはブログのタイトル下に〈風評被害と戦っています〉とお書きになっているが、その意味するところが今一つ理解できない。福島の、東北の農作物のすべてが100%安全だと断言しているのではないと思う(実際にここ数日でも、福島のきのこの、千葉・埼玉のお茶の“報道”があった)ので、おそらくご自分のところで作っているものは安全だという主張なのではないかと拝察した。しかし、スーパーの野菜に〈放射性物質不検出〉というシールが貼ってあるわけではない以上、スーパーの野菜売り場でロシアン・ルーレットのプレイヤーになったような気分になる消費者心理もまた、不自然なものではないはずだ。

食べ物によって内部被曝するリスクが皆無であることが証明されない限り、それぞれの人に、それぞれの怖がり方、リアクションの取り方がある。テレヴィの天気予報で降水確率10%だと言っているから傘を持たずに出かけたが、急に雨が降ってきて濡れたじゃないか、といってテレヴィ局を相手取って損害賠償請求を行った場合、その主張は合理的なものとして認められ得るだろうか? 政府や福島県の「特に問題ありません」「ただちに影響はありません」発言が、天気予報よりも遥かに厳格な、将来的責任と保証を担保して発せられていると信じきれる根拠はなんだろうか? 

ましてや、天気については過去の膨大なデータが存在し、それらを元にコンピュータ解析してはじき出してもなお、その予報がまま間違うのである。一方、放射性物質が人体へ与える影響に関しては、まだ世界のどこにも明確なデータがない、と政府が明言しているではないか。なのに、何故ゆえ、“データがない方”に関しての“安全宣言”だけ絶対に正しいと信じられるのか・・・。オレには全く理解できない。


今日は、こんな番組の発言書き起こしを見つけた。

激論、武田邦彦VS今村克彦(子供からの質問)「東北の野菜とか牛肉を食べたら僕らはどうなるの?」たかじんのそこまで言って委員会【書き起こしと動画】まず、国土を綺麗に(除染)してから・・・


武田邦彦さんの言っていることを、どこまで信じるか、信じないかも各自の判断だろうけれど、その判断のために、いろいろな情報が必要なのであり、その中の情報の何割かは、齊藤さんおっしゃるところの“風評被害”の元凶なのだと思う。お気の毒ではあるけれど、真剣に身を守ろうと思ったら、まず、するべきことは、安心よりも心配なのです。

正直に言って、スーパーにいつも通り福島産きゅうりがきれいに並んでいるのを見て、オレはそこに安心よりも不安を感じる。それは単純に作物の放射性物質汚染を気にするだけではなく、それを買うことが、結果的に電力マフィア、原発推進派を利することになる可能性があるのではないかという心配もあるのだ。よって、そんなオレは今、北の野菜を快く買うことなど到底できない。本当は、作って売る側も、“風評”が本当の敵なのかどうか、分かってるんだと思うのだけれど。
(で、敵の敵は味方、という言葉もあるのだが・・・。)


その他、最近注目した報道:

公開された資料で判明 報じられなかった プルトニウム 「大量放出」の事実

赤坂御用地内で木登りをして遊ぶ悠仁さま=2011年8月10日、宮内庁提供

後者は、オレが敬称付き5歳児のファンなのではなくて、この報道が〈首都が汚染されているという“風評”があるけれど、ほら、その真ん中赤坂では、(日本で一番大事な)5歳児が素手で木登りできるんですよ〉、というメッセージなんだろうなあ、と、想像したから。木登りさせる前には、きっちり測ってるんだろうけど。