10.14.2009

Le Bentō, c'est chic.

■“弁当男子”なる言葉が流行しているが、実は若い世代の節約志向が高まって性別問わず、弁当持参で出勤、って人が増えてるらしい。テレヴィのワイドショウでもその特集を何度か見たし、東急ハンズやら西友やらでも、弁当自作者のためのグッズを売るコーナーがデカくなってる。

特に、日本男児は概して未だに家庭的な作業をすることを肯定的に考えていないと欧米諸国から見なされているフシがあり、昨今の“弁当男子”現象はニューズ・ヴァリューがあるものとして結構外国でも報道されてるみたいだ。
(アメリカ、イギリス、フランスの報道で日本の“bento danshi”の記事を読んだが、その現象の原因としては、だいたいどこも日本の景況悪化を挙げている。が、この国のうそつき年金制度を見限った若者が、早くも20代から老後を見すえて貯金に精を出していることに言及した記事は、オレが見たところない。東京特派員のジャーナリスト連中もたいしたことねえな)。

ところが、それらの国ではそもそもしばらく前から“bento”そのものへの注目が高まってるのだ。特に最近はフランスのメディアでも〈Bentō〉の文字が踊っているのがまま目につく。“愛好者”のブログも数あり、例えば写真がきれいでいつも見ている(確か)ボルドーの女の子の bento blog がこれ。フランスでも相当のアクセス数がある人気ブログらしい(このトップから飛べる、フランス語圏&インターナショナル・ベントー・ブログのリンクも凄い)。



これによると、モード誌『marie claire』の今月号でも Bentō 特集が組まれたという。ル・ベントー、セ・シック、ってことらしい(・・・別に初めての特集ではないようだが)。

もちろんフランスにも “bento danshi” はいる。日本好き男子は、まさか流行に乗り遅れたりしない。この人は、たまにギョッとする弁当をこしらえるが、この日はタブレ&チョリソ(へえー)、キャロット・サラダで、結構フォトジェニックだ。



アメリカにも Bento Specialist がいて、このサン・フランシスコのビギーさんは、その道で結構有名な人のようだ。

で彼女、日本のメディアから、「アメリカにも“bento danshi” はいるの?」と訊かれたもんだから、律義に自分のブログでアンケートを取っている(もし、あなたがアメリカ人の bento maker なら、教えて。あなた、男性? 女性?)
結果は、今日現在で、彼女のブログを見てるアメリカの弁当自作人口における男子率は17%・・・これが多いのか、少ないのか分かんないが、ちゃんといる。

で、このビギーさんのブログのリンクから今度はイギリスの新聞『The Guardian』のサイトに飛んでみたら、その記事の笑える書き出しはこうだ。

《戦後最大の景気後退により、”サラリーマン”の名称で知られる日本のキッチン恐怖症ホワイトカラーたちも、彼らの内なるジェイミー・オリヴァーを引き出さざるを得ない状況になった》。

その記事を書いた東京特派員が、嬉々として“正しい”日本風弁当の作り方をイギリス人に教えてるヴィデオが、また、しみじみと可笑しい(このヴィデオの音楽の被せ方なんか、きみがジェイミー気取りなんじゃねえの? とツッコミを入れたくなる)。

といった風に、最近オレはキー・ワード《bento》で検索して、いろんな国のベントー事情を見るのが趣味だ(昼飯は結構頻繁に――晩飯はほぼ毎日――自分で作っているが、勤め人じゃないから別に弁当箱に入れる必要性がないので、こういうブログには全く実用性を求めていない。ただ、人の作る弁当を見るのが楽しい)。ただし、親切心に溢れた日本人女子が得意の英語を駆使して外国人向けに弁当作り指南サイトを作ってたりするのには、あまり興味がない(オレが日本人なんだから当然か)。

今日発売の週刊『東洋経済』誌でも《弁当男子が増殖中》という記事を組んでいたので、男子をターゲットにした楽しい弁当グッズの新製品なんかがどっさり載ってんのかと思ったら・・・若者の生活スタイルの変化が経済に及ぼす影響やら、それで弁当が売れなくなったコンヴィニの苦悩やら、数字だらけの色気のない記事で(経済誌なんだから当然か)、それも興味なかった。経済はシックじゃねえ。