■ヒップ・ホップ、ファンク、ソウル、アフロ・ビート、エレクトロニカをまたぐラインナップが最高の、ぼくの大好きなドイツ(ケルン/ベルリン/マンハイム・ベイス)の《Jakarta Records(ジャカルタ・レコーズ)》(http://www.jakarta-records.de/)
が、そのリリース40作目を記念して、フリー・カセットを配布する。同レーベルのサンプラー的内容で、かつ未発表音源も満載で無料。ドイツのレコード屋で限定数配布されるけど、もらいに行けない人は、それがまるまるフリー・ダウンロードできる。
が、そのリリース40作目を記念して、フリー・カセットを配布する。同レーベルのサンプラー的内容で、かつ未発表音源も満載で無料。ドイツのレコード屋で限定数配布されるけど、もらいに行けない人は、それがまるまるフリー・ダウンロードできる。
《ジャカルタ・レコーズ》の看板アーティストは、まずはガーナ出身でブルックリンで活動するブリッツ・ジ・アンバサダー(Blitz The Ambassador)だろう。フェラ・クティのアフロビートとホーンのフィーリングを継承した生管楽器バンドを従えて活動する彼は、アルバム『Stereotype』(2009)で注目を集め、去年の『Native Sun』も最高だった。ぼくは昨年作を『ミュージック・マガジン』の2011年個人ベスト10の“4位”に選んだが、先日それの日本盤が出たのでチェックして欲しい。これ→ http://plankton.co.jp/392/index.html
そのブリッツ・ジ・アンバサダーと並んで《ジャカルタ・レコーズ》の一押しは、ドイツのフィメールMCアクア・ナル(Akua Naru)だ。原初的なヒップ・ホップの質感と、そこにしかない洒脱さの奥に、ネオ・ブラック・ディアスポラ運動の静かな高揚感が聴き取れる。この〈ネオ・ブラック・ディアスポラ・ムーヴメント〉は、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、カリブなど、様々な拠点で活動するアーティストによる、様々な趣向のビート/アプローチをより集めてアフリカを指向しているこのレーベルの、いわば隠れテーマだと感じる。高い評価を得たアクア・ナルのシングルも(この“カセット”とはまた別に)フリー・ダウンロードできる。クリップもキュートだ。
The World is Listening 12"(Free Download)
この曲もいい!
あと、ぼくの好きなところでは……カリフォルニア/オークランドの人気ヒップ・ホップ・バンド:クラウン・シティ・ロッカーズ(The Crown City Rockers)のMCラーシャン・アーマッド(Raashan Ahmad)も、ソロ次作を《ジャカルタ》から準備していて、で、今回のカセットにも入ってる。
それから、今回の“フリー・カセット”音源の中で今一番話題になってるのは、エチオピア・ファンク・ファンが瞠目した、ニュー・ジーランドのバンド:将軍オーケストラ(Shogun Orchestra)による、「佐藤さん(Sato San)」というタイトルの曲だろう。ここはJahのおられるJahPanなんで、さもありなん、というのもあながち冗談じゃなくて、このショーグン・オーケストラ、レゲエと無関係ではない。
このバンドは、レゲエ・ファンには有名なファット・フレディーズ・ドロップ(Fat Freddy's Drop)や、ぼくがここ(音楽夜噺)で紹介したブラック・シーズ(The Black Seeds)という、ニュー・ジーランドの人気レゲエ・グループのメンバーが組んだもので、そんな彼らが今回はレゲエではなく、ハイチでアフロ・グルーヴなサウンドを録音する、という趣向の作品だったのだ。そのLP(セルフタイトル盤↑)はちょっと前に日本に入ってきて、好き者たちが話題にしてるよね(LPとディジタル・リリースのみで、今のところCDのリリースはないようだ)。
この《ジャカルタ・レコーズ》は、死語になって久しい〈レーベル買い〉という言葉を久しぶりに思い出させる。そのアウトラインを手早く聴きたければ《サウンドクラウド》と、この“フリー・カセット”音源でバッチリ。
“一流”レコード会社が政治屋と組んで、ダウンロードやリッピングの規制に躍起になってる国があるかと思えば、その考え方と真っ向から対立する海賊党が議会に議席を得る国々がある。で、そうしたテクノロジーを使ってディジタル・リリースもやりながら、LPだってプレスするし、フリー・カセット・テイプも配って、「ハイテクにばっかり頼らずに、楽しくラジカセでも聴いて、忘れてた何かを思い出してくれ」、っていう粋なことをやるドイツのレーベルもある、って話。……しかし“一流”レコード会社って、図体デカいと守るものが多くてダメね。結局あの人たちの守ってんの、音楽とか文化じゃないもんね。楽しくクリエイトしている活き活き感がないでしょ。で、リスナーを悪者扱い。私たちは被害者です、っていうふてヅラから、ネガティヴなオーラがドバドバ出てる。
オレは楽しそうに音楽を作り、慎ましく暮らし、余裕ができた分は、まずみんなを楽しませることに使う、っていう《ジャカルタ》みたいな音楽ビジネスが好きだね。気持ちよくサンプルを配るレーベルの商品って、結局のところ、気持ちよく買える。そういうものでしょ。
このリンク(↑)先のカセットのジャケをクリックするとダウンロード・リンクに飛びます(FLACもあり)。